超電導の応用最新技術

技術者・研究者向けの専門書籍紹介

超電導の応用最新技術

発刊日 2008年5月 ISBN978-4-7813-0016-0
体 裁 B5判,310頁

刊行のねらい
 超電導技術は,国として重点的に推進すべき技術分野として選定されているエネルギー・電力分野,産業・輸送分野,診断・医療分野,通信・情報分野すべてに関わっており,重要基幹技術である。最近,わが国をはじめ世界各国で高温超電導線材技術および,超電導エレクトロニクス素子技術の著しい進歩があって,超電導技術の実用化の展望が見通せるようになってきた。このような背景の下,経済産業省超電導技術の効率的な推進を容易にするために超電導分野の技術戦略マップを2007年に発表した。超電導技術は急速な進展が続いていることを考慮し,現在もマップの更新を続けている。世界的にもロードマップを作り超電導技術の開発を戦略的に進めて行こうとする動きが具体化してきている。
 本レポートでは,まず,超電導応用技術の理解のために,超電導に関する基礎技術として,超電導現象の解説から,材料,線材,エレクトロニクス,さらに超電導応用の必須な周辺技術としての冷凍技術の解説がしてある。次に,応用技術に関して,上記重点4分野における各種機器開発の現状,動向を世界の状況も含め解説してある。
 以上,本レポートは超電導応用技術全般を系統的に網羅してあって,各項目はそれぞれの分野の第一線の研究者,技術者により執筆されており,超電導技術の現状を的確に報告したものであると考えている。

(「はじめに」より抜粋)

2008年5月  塚本修巳


書籍の内容
【基礎編】

第1章 総論(塚本修巳)
1. 序言
2. 応用のための基礎技術
  2.1 超電導コイル技術
    2.1.1 コイルの安定化
    2.1.2 クエンチ保護
  2.2 交流損失
3. 超電導技術戦略マップ

第2章 超電導現象(下山淳一,堀井滋)
1. はじめに
2. 超電導現象の特徴(ゼロ抵抗,永久電流,完全反磁性,ジョセフソン効果)
3. 超電導を示す物質
4. 超電導発現機構
5. 第一種超電導,第二種超電導
6. 超電導状態の限界
  6.1 熱力学視点から見た超電導状態
  6.2 臨界温度
  6.3 臨界磁場
7. 磁束ピンニング
8. 上部臨界磁場,不可逆磁場と磁気相図
9. ジョセフソン効果
10. 超電導材料特性に重要な性質

第3章 超伝導材料山田穣
1. はじめに
2. 金属系超伝導材料―単体元素から合金,金属間化合物へ
  2.1 合金超伝導
  2.2 A15型金属間化合物超伝導
  2.3 MgB2超伝導
3. 高温超伝導
  3.1 Y系超伝導
  3.2 Bi系超伝導
4. おわりに

第4章 超電導線材の開発(戸叶一正)
1. はじめに
2. 金属系超電導線材
  2.1 Nb-Ti線材
  2.2 Nb3Sn線材
  2.3 Nb3Al線材
  2.4 MgB2線材
3. 酸化物系高温超電導線材
  3.1 ビスマス系線材
    3.1.1 Bi-2212
    3.1.2 Bi-2223
  3.2 イットリウム系線材
4. おわりに

第5章 バルク超電導材料の開発(成木紳也)
1. はじめに
2. RE-Ba-Cu-O系バルク超電導材料の作製方法
3. バルク超電導材料におけるピンニングセンターと臨界電流密度
  3.1 RE211等の非超電導相の導入と微細化
  3.2 置換領域
4. バルク超電導材料の捕捉磁場
  4.1 Y系およびDy系材料
  4.2 軽希土類元素系材料
  4.3 中性子照射材料
  4.4 液体窒素温度以下の低温における捕捉磁場
5. バルク超電導材料の強化方法
  5.1 Ag添加
  5.2 金属リングによる外部補強
  5.3 樹脂含浸
6. バルク超電導材料の着磁方法
7. おわりに

第6章 デバイス超電導材の開発(田辺圭一)
1. はじめに
2. デバイス用薄膜作製技術
  2.1 金属系低温超電導薄膜
  2.2 酸化物系高温超電導薄膜
  2.3 硼化マグネシウム(MgB2)薄膜
3. ジョセフソン接合作製技術
  3.1 低温超電導接合
  3.2 高温超電導接合
4. 集積回路作製技術
5. おわりに

第7章 クライオクーラ(栗山透)
1. はじめに
2. クライオクーラの効率
3. クライオクーラの種類
  3.1 概要
  3.2 クライオクーラとそのサイクル
    3.2.1 スターリング冷凍機
    3.2.2 Gifford-McMahon冷凍機(GM冷凍機)
    3.2.3 パルスチューブ冷凍機
    3.2.4 GM/JT冷凍機
4. クライオクーラの利用


【エネルギー・電力分野応用編】

第8章 超電導発電機(仁田旦三)
1. はじめに
2. 構造と特徴
  2.1 単極直流発電機
    2.1.1 構造
    2.1.2 特徴
  2.2 同期発電機
    2.2.1 構造
    2.2.2 特徴
  2.3 バルク超電導体発電機
    2.3.1 構造
    2.3.2 特徴
3. 開発状況
  3.1 直流単極発電機
  3.2 同期発電機
  3.3 バルク超電導体発電機

第9章 超電導変圧器(林秀美)
1. はじめに
2. Bi系変圧器技術の開発
3. Y系変圧器技術の開発
  3.1 交流損失低減技術の開発
  3.2 高耐電圧化技術の開発
  3.3 Y系変圧器の設計検討
4. 鉄道車両用の超電導主変圧器
5. 海外の超電導変圧器
6. まとめ

第10章 電力貯蔵
1. SMES(長屋重夫)
  1.1 SMESの基本構造
    1.1.1 SMESについて
    1.1.2 基本原理
    1.1.3 基本構成
    1.1.4 SMESにおける開発項目
  1.2 開発の現状
    1.2.1 国内外の開発の現状
    1.2.2 系統制御用SMES
    1.2.3 瞬低補償用SMES
    1.2.4 酸化物超電導SMESの開発
2. フライホイール(腰塚直己)
  2.1 はじめに
  2.2 内外の開発状況
  2.3 NEDOプロジェクト
    2.3.1 超電導軸受要素技術開発
    2.3.2 超電導軸受応用技術開発
    2.3.3 今後の課題
  2.4 おわりに

第11章 超電導ケーブル(佐藤謙一)
1. はじめに
2. 超電導ケーブル用の高温超電導線材の現状
3. 高温超電導ケーブル要素技術の開発
  3.1 フレキシブル導体
  3.2 3相ケーブルの開発と評価結果
  3.3 長尺導体と交流損失評価結果
  3.4 30mケーブルプロトタイプと課通電特性
  3.5 過負荷電流特性
4. 高温超電導ケーブルシステムの開発と実証試験
  4.1 世界の開発状況
  4.2 ALBANYプロジェクト
    4.2.1 システム概要
    4.2.2 超電導導体と超電導シールド
    4.2.3 事故電流設計(短絡電流対応)
    4.2.4 電気絶縁
    4.2.5 熱絶縁と張力対策
    4.2.6 ケーブル製造・出荷・布設
    4.2.7 中間接続部(ジョイント)および端末組立
    4.2.8 冷却システムとケーブル竣工試験結果
5. おわりに

第12章 限流器(矢澤孝)
1. はじめに
2. 限流器とは
  2.1 限流器の機能
  2.2 限流器の適用
  2.3 限流器の原理
    2.3.1 抵抗発生型
    2.3.2 磁気遮蔽型
    2.3.3 整流器型
    2.3.4 可飽和リアクトル型
    2.3.5 LC共振型
    2.3.6 三巻線リアクトル型
3. 特性と課題
  3.1 超電導限流器の特長
  3.2 実用化に向けての課題
    3.2.1 技術面の課題
    3.2.2 規格について
4. 内外の開発例
5. まとめ

第13章 核融合(小泉徳潔)
1. 核融合超電導
2. ITER超電導コイルとモデル・コイル計画
3. 核融合炉用超電導導体
  3.1 核融合炉用CICCの構造
  3.2 パルス磁場性能
  3.3 歪特性と臨界電流性能
  3.4 ITER用導体
  3.5 次世代核融合炉用導体
4. 核融合炉用超電導コイル
  4.1 ITER超電導コイルの構造
  4.2 モデル・コイル試験
  4.3 TFコイル製作技術
5. まとめ


【産業・輸送分野応用編】

第14章 超電導モータ(和泉充)
1. はじめに
2. 電気推進船と超電導電動機
3. 超電導電動機を実用化させるための要素技術
4. おわりに

第15章 超電導リニアの開発動向(後藤康之)
1. はじめに
2. 山梨リニア実験線での走行試験概要
  2.1 平成9年度〜平成11年度
    2.1.1 基本走行試験
    2.1.2 総合機能確認試験
  2.2 平成12年度〜平成16年度
    2.2.1 信頼性確認試験
    2.2.2 コスト低減の技術開発
    2.2.3 車両の空力特性の改善
    2.2.4 連続走行試験,最高速度向上試験,高速すれ違い試験
  2.3 平成17年度〜
    2.3.1 更なる長期耐久性の検証
    2.3.2 高温超電導磁石を搭載した走行試験
3. おわりに

第16章 磁気分離(西嶋茂宏)
1. はじめに
2. 粉体からの微粒子の分離
3. 製紙工場からの廃水処理
4. おわりに


【診断・医療分野応用編】

第17章 MRI(杉本博)
1. はじめに
2. MRIの原理
3. 3つの磁場から構成されるMRI
4. 静磁場と超電導磁石
  4.1 超電導磁石開発の経緯
  4.2 超電導磁石の構成と仕様
5. 傾斜磁場
6. 高周波磁場
7. 臨床応用技術
  7.1 「形を見る」形態診断の適用範囲の拡大
  7.2 「動きを見る」血流等の計測
  7.3 「生理機能を見る」生化学情報の画像化
8. 今後の展開

第18章 NMR(林征治)
1. はじめに
2. NMR分光計の構成
3. NMR用超電導マグネットの構造
4. NMR用超電導マグネットの性能要件
  4.1 磁場均一度
  4.2 磁場安定度
  4.3 漏洩磁場
  4.4 冷媒消費量
5. 技術動向,新たな試み
  5.1 高磁場化
  5.2 ゼロボイルオフ化・無冷媒化
6. まとめ

第19章 加速器(土屋清澄)
1. はじめに
2. LHC計画
  2.1 LHC加速器超伝導磁石
    2.1.1 2極磁石
    2.1.2 4極磁石
    2.1.3 超伝導線材
    2.1.4 LHCアップグレード用超伝導磁石の開発
  2.2 検出器用超伝導磁石
    2.2.1 ATLAS超伝導磁石
    2.2.2 CMS超伝導磁石
3. 高エネルギー加速器研究機構KEK)における超伝導磁石
  3.1 KEKBの衝突点超伝導磁石
  3.2 ニュートリノビームライン用超伝導磁石
4. ILCの概要
5. おわりに

第20章 SQUID応用(塚田啓二,田中三郎)
1. はじめに
2. 動作原理
3. LTS-SQUIDとHTS-SQUID
4. 感度,応用分野
5. 食品内異物検出の状況
6. 超伝導磁気センサ式異物検出装置の原理
7. 超伝導磁気センサ式異物検出装置の開発
8. 医療応用
9. おわりに


【情報・通信分野応用編】

第21章 電圧標準(東海林彰)
1. はじめに
2. Nb/AlOx/Nb-JJアレーを用いた電圧標準
3. プログラマブル・ジョセフソン電圧標準
4. おわりに

第22章 電磁波検出器(野口卓)
1. はじめに
2. 低雑音受信機の必要性
3. SISミキサを用いた低雑音受信機
  3.1 Nb/AlOx/Nb SIS接合
  3.2 SISミキサ
  3.3 同調回路
  3.4 SIS受信機の性能
4. THz帯SISミキサ
5. おわりに

第23章 超伝導フィルタ(山中一典)
1. はじめに
2. HTSと高周波特性
3. HTSフィルタ
4. 応用と研究開発の動向

第24章 SFQ回路とその情報通信機器応用(藤巻朗,日高睦夫)
1. SFQ回路とは
  1.1 SFQ回路の原理と構成
  1.2 SFQ回路の特長
2. 作製プロセス技術
3. 回路設計技術
4. SFQ情報通信機器の例
  4.1 アナログ・デジタル変換回路
  4.2 高性能計算機
  4.3 ネットワークルータ用スイッチ
  4.3.1 SFQスイッチを用いたルータ高性能化と低消費電力化

第25章 各国の開発動向
1. 電力機器開発の世界の動向(塚本修巳)
  1.1 電力システムの課題と超電導機器への期待
  1.2 超電導電力システム
  1.3 各国における超電導電力機器開発の位置づけと研究開発プロジェクト
    1.3.1 米国
    1.3.2 ヨーロッパ
    1.3.3 日本
    1.3.4 韓国および中国
  1.4 各超電導機器の開発動向
    1.4.1 電力ケーブル
    1.4.2 限流器
    1.4.3 変圧器
    1.4.4 SMES
    1.4.5 超電導フライホイールエネルギー蓄積装置(SFES)
    1.4.6 回転機
  1.5 まとめ
2. エレクトロニクス(蓮尾信也)
  2.1 はじめに
  2.2 超電導エレクトロニクス用デバイスの種類
    2.2.1 受動デバイス
    2.2.2 能動デバイス
  2.3 各デバイスの開発動向
    2.3.1 超電導フィルタ
    2.3.2 SQUID
    2.3.3 電磁波検出器
    2.3.4 電圧標準
    2.3.5 デジタル回路
  2.4 おわりに