有機デバイスのための界面評価と制御技術

技術者・研究者向けの専門書籍紹介

有機デバイスのための界面評価と制御技術


発刊日 2009年8月 ISBN978-4-7813-0159-4 C3043
体 裁 B5判,277頁

刊行にあたって
 有機バイスに関連した研究が活発である。しかし,有機FET,有機ELなどのデバイスでは,いまだ有機材料本来の機能を活かしきれていないのが実状である。有機材料の持つ機能を使い切るためには,有機材料のみならず,電極と有機半導体有機半導体と絶縁体など,デバイス中にある界面の機能についてもあわせて理解する必要がある。有機トランジスタ特性や有機EL有機太陽電池などのデバイスの機能は,界面の理解,さらに制御なくして困難である。こうした界面の重要性は,もちろん無機シリコンデバイスの研究開発の歴史においても指摘され続けてきたことである。しかし,有機バイスの研究開発では,さらに,有機分子の幾何形状,界面のトポロジー,分子集合体の構造,フレキシブルな構造などの特徴や作成プロセスの違いなども踏まえる必要がある。そこで,「有機バイスのための界面評価と制御技術」をテーマとし,一線で活躍する研究者・技術者の方々に,それぞれの視点から最近の研究の状況や話題について執筆していただくことにした。

(「はじめに」より抜粋)

2009年7月  東京工業大学 大学院 岩本光正


書籍の内容

【第1編 界面現象の観察と界面構造】

[電子デバイス界面]

第1章 有機バイス関連界面の電子構造の決定(金井要)
  1.はじめに
  2.電子構造の決定方法
   2.1 紫外光電子分光UPS)と逆光電子分光(IPES)
  3.有機バイス関連界面の電子構造の決定
   3.1 有機/金属界面における界面電気二重層の形成
   3.2 界面電気二重層の成因
    3.2.1 相互作用の強い系
    3.2.2 弱い化学吸着系
    3.2.3 相互作用の弱い系
  4.まとめ

第2章 電子スピン共鳴法(ESR)を用いた有機トランジスタ界面のミクロ特性評価法(丸本一弘)
  1.はじめに
  2.導電性高分子バイス界面のESR研究
  3.ペンタセンFET界面のESR研究
   3.1 ペンタセン
   3.2 ESR研究用のペンタセンFETの作製と動作
   3.3 ペンタセンFETのESR観測
   3.4 ペンタセンFET界面の分子配向評価
   3.5 ペンタセンFET界面の電荷輸送機構
  4.ルブレン単結晶FET界面のESR研究
   4.1 ルブレン単結晶FET
   4.2 ESR研究用のルブレン単結晶FETの作製と動作
   4.3 ルブレン単結晶FETのESR観測
   4.4 ルブレン単結晶FETのESRにおける界面修飾効果
   4.5 ペンタセンFET界面の分子配向評価
  5.まとめと今後の展望

第3章 薄膜トランジスタにおける界面キャリア輸送の原子間力顕微鏡ポテンショメトリによる評価(中村雅一)
  1.はじめに
  2.原子間力顕微鏡ポテンショメトリの原理と装置構成
  3.電極/活性層界面キャリア輸送の評価例
  4.活性層/ゲート絶縁膜界面キャリア輸送の評価例
  5.おわりに

第4章 微小角入射X線回折法によるポリチオフェン摩擦転写超薄膜の界面構造評価(永松秀一)
  1.はじめに
  2.摩擦転写法
  3.微小角入射X線回折
  4.トランジスタ特性
  5.おわりに

第5章 原子間力顕微鏡とケルビンプローブ表面力顕微鏡(KPFM)による発光素子の解析(佐藤宣夫,香取重尊)
  1.はじめに
  2.原子間力顕微鏡(AFM)
   2.1 AFMの測定原理
   2.2 AFMの測定モード
    2.2.1 探針-試料間に働く力
   2.3 カンチレバーの駆動方式
    2.3.1 Static-mode(スタティックモード)
    2.3.2 Dynamic-mode(ダイナミックモード)
   2.4 ダイナミックモードAFMでの検出方式
    2.4.1 AM検出
    2.4.2 FM検出
   2.5 AFMの特長
  3.ケルビンプローブ表面力顕微鏡(KPFM)の原理
   3.1 ケルビン法の原理
   3.2 静電気力検出と表面電位
   3.3 KPFMの分解能
   3.4 一般的なKPFMの問題点
  4.発光素子のKPFM観察
   4.1 有機ELの現状
   4.2 実験方法
    4.2.1 試料作製
    4.2.2 実験装置
   4.3 実験結果と考察
   4.4 まとめと今後の課題

第6章 MDC-SHG法によるエネルギー構造と空間構造の評価(岩本光正)
  1.はじめに
  2.有機分子界面の構造と自発分極
   2.1 有機分子膜界面の構造
   2.2 双極子配列による界面分極構造の評価
   2.3 MDC-SHG法によるS1とS3の評価
  3.界面に蓄積される電荷とMDC-SHG
   3.1 界面電荷移動による帯電と表面電位
   3.2 SHGによる電子移動の評価
   3.3 2層誘電体の界面に蓄積される電荷による分極
  4.まとめ

第7章 電子状態と電気伝導:界面電子準位接続と電荷移動度研究の課題と現状(上野信雄)
  1.はじめに
   1.1 プロローグ
  2.界面電子準位接続の基本問題
  3.移動度の内部を探る:ホール移動度の光電子分光
  4.ホッピング移動度:HOMOホール/分子振動結合とホール寿命
  5.バンド伝導による移動度:エネルギーバンド分散と移動度
  6.HOMO準位の2t分裂:ダイマーナノ構造の形成によるtの実測
  7.おわりに


[光デバイス界面]

第8章 増感色素の酸化チタン表面の吸着構造の評価(廣瀬文彦)
  1.はじめに〜色素増感太陽電池の概要〜
  2.増感色素吸着酸化チタン表面の多重内部反射赤外吸収分光観察
  3.N719増感色素吸着酸化チタン表面の多重内部反射赤外吸収分光の評価事例
  4.赤外吸収分光観察を用いたN719色素増感電池のプロセス改善事例
   4.1 UV照射法を用いた発電特性の改善事例
   4.2 増感色素吸着密度制御による発電特性の改善事例
  5.おわりに

第9章 Backside SIMSによる有機ELの劣化評価(宮本隆志,藤山紀之)
  1.はじめに
  2.素子構造変化を捉える―Backside SIMS―
   2.1 SIMS(二次イオン質量分析
   2.2 Backside SIMS
  3.有機EL素子のBackside SIMSによる解析例
   3.1 高温保存時の層構造変化(1)(HTM)
   3.2 高温保存時の層構造変化(2)(EIM)
  4.おわりに

第10章 弾道電子放出顕微鏡の電子注入バリア計測による有機バイスの評価(平本昌宏)


【第2編 界面制御とプロセス】

[ウェットプロセス]

第1章 自己組織化膜による半導体の界面(加藤拓司,鳥居昌史)
  1.はじめに
  2.OFETにおける有機半導体/絶縁膜界面修飾
  3.自己組織化単分子膜の構造解析
   3.1 X線回折測定(面内回折測定)
   3.2 X線反射率測定
   3.3 IR測定(Grazing incident ATR法)
   3.4 X線光電子分光法(XPS
   3.5 ペニングイオン化電子分光法(PIES)と紫外線光電子分光法(UPS
  4.自己組織化単分子膜を用いたOFET

第2章 高分子薄膜太陽電池の界面制御大北英生,伊藤紳三郎)
  1.はじめに
  2.交互吸着法による界面設計
   2.1 交互吸着超薄膜の作製方法
   2.2 電荷分離界面の設計
   2.3 ナノ精度での膜厚の最適化
  3.増感色素の界面修飾
   3.1 色素の分子構造と分散特性
   3.2 色素を導入した有機薄膜太陽電池の素子特性と増感機構
   3.3 色素の界面修飾
  4.おわりに

第3章 表面選択塗布法を用いた自己形成有機トランジスタ(加納正隆)
  1.はじめに
  2.表面選択塗布法による有機FETアレイの作製
   2.1 表面選択塗布法の原理
   2.2 表面選択塗布法を用いた有機FETアレイの形成
   2.3 表面選択塗布法を用いた有機FETアレイの電気特性と動作安定性
   2.4 表面選択塗布法のフレキシブル基板への応用
  3.おわりに


[ドライプロセス]

第4章 物理蒸着法を用いた有機バイスの界面制御(臼井博明)
  1.はじめに
  2.物理蒸着による高分子薄膜形成
  3.高分子材料の直接蒸着
  4.共蒸着による重合膜形成
  5.単独蒸着による重合膜形成
  6.表面開始蒸着重合
   6.1 表面開始蒸着重合によるビニルポリマーの製膜
   6.2 表面開始蒸着重合によるポリペプチドの製膜
  7.おわりに

第5章 有機単結晶シートの接合界面とトランジスタ機能(竹谷純一)
  1.はじめに
  2.有機単結晶シートの「貼り合わせ」による接合界面
   2.1 有機単結晶シートの成長と結晶表面の観察
   2.2 有機単結晶シートの「貼り合わせ」
   2.3 有機単結晶トランジスタ
  3.有機単結晶トランジスタの電界効果特性
   3.1 自己組織化単分子膜を用いた高移動度ルブレン単結晶トランジスタ
   3.2 大気中で動作するn型有機単結晶トランジスタ
  4.おわりに

第6章 圧着法を用いたポリマー太陽電池の接合界面制御(但馬敬介)
  1.はじめに
  2.圧着法を用いたポリマー太陽電池の作成
  3.まとめ


[電解重合]

第7章 有機電解合成と界面電気化学現象(小野田光宣)
  1.はじめに
  2.電解重合法
  3.電解重合反応の機構
  4.陰極還元重合による導電性高分子
  5.電解重合膜の機能応用例
   5.1 導電性高分子-無機物質複合体
   5.2 人工筋肉,駆動素子
   5.3 分子機械,分子素子
   5.4 分子ワイヤ,超格子構造素子
  6.まとめ


【第3編】 界面制御とデバイス特性

トランジスタ

第1章 全印刷プロセスによる有機TFTアレイ化技術(八瀬清志)
  1.はじめに
  2.マイクロコンタクトプリント法による大面積・高精細有機TFTパターニング
  3.全印刷有機TFTによる液晶パネルの駆動
  4.おわりに

第2章 イオン液体電解質を用いたトランジスタの製造と界面(小野新平,竹谷純一)
  1.はじめに
  2.イオン液体電解質を用いた有機単結晶FETの構造と作製法
   2.1 高性能の有機FETの実現
   2.2 電解質を用いた有機FET
   2.3 イオン液体電解質を使用した有機FET
  3.イオン液体電解質の性質
  4.デバイスの構造
  5.イオン液体電解質を用いた有機単結晶FETの特性
  6.高性能有機FETに必要なイオン液体電解質
  7.今後の展開


太陽電池

第3章 ナノ・ヘテロ界面構造の制御による有機色素増感太陽電池の高効率化(原浩二郎)
  1.はじめに
  2.高性能有機色素の分子構造
  3.有機色素の会合体抑制による高効率化
  4.有機色素の分子構造による再結合抑制
  5.アルキル基による吸着状態や太陽電池特性の変化
  6.おわりに

第4章 界面制御技術による高性能固体太陽電池作製に関する研究開発動向(早瀬修二)
  1.はじめに
  2.色素増感太陽電池の発電機構
  3.液体型DSSCとホール輸送固体型DSSCの発電機構の違い
  4.有機ホール輸送層を用いた固体DSSC
  5.無機ホール輸送材料を用いた固体DSSC
  6.擬固体DSSC
  7.まとめ

第5章 塗布法により作製した高分子系有機薄膜太陽電池と界面(山成敏広,當摩哲也,吉田郵司)
  1.はじめに
  2.有機薄膜太陽電池研究の歴史
  3.有機半導体材料
  4.高分子塗布系有機薄膜太陽電池
  5.低コスト作製技術の検討
  6.セルの経時劣化のメカニズム
  7.おわりに


有機EL

第6章 フラーレン層挿入によるナノ界面制御(加藤景三)
  1.まえがき
  2.フラーレン(C60)層挿入によるOLEDの特性
  3.まとめ

第7章 ヘテロ接合界面制御による有機EL素子の特性向上(松島敏則,村田英幸)
  1.はじめに
  2.ITO電極/正孔輸送層界面の制御が有機EL特性に及ぼす影響
  3.正孔輸送層/発光層界面の制御が有機EL特性に及ぼす影響
  4.まとめ