太陽電池・構成材料の市場と技術

技術者・研究者向けの専門書籍紹介

太陽電池・構成材料の市場と技術

刊行にあたって
 原油価格高騰やエネルギー枯渇が叫ばれるなか,原油などの化石燃料に代わる次世代エネルギーとして太陽電池が注目を浴びている。ここ数年間,各企業は太陽光発電の研究開発に力を入れており,各種類の太陽電池で,太陽光エネルギーの変換効率の向上を競いあっている状況である。

 国内では,住宅向けの太陽光発電補助金制度が94年に始まり,太陽光発電を購入する人に1キロワット当たり最大90万円を補助するもので,補助金制度を背景に,日本の太陽光発電の累積導入量は04年までは世界トップに立っていた。しかし,太陽光発電システムの経済的な負担が大きいため,補助金制度が05年に終了し,導入量は伸び悩んでいる。

 一方,欧州では環境問題への関心が高まる中,太陽光発電の活用は近年,急増している。ドイツは,太陽光発電の電力を通常の電力料金の3倍で買い取る制度を04年にスタートし,これを機に太陽光発電の普及が加速。05年の累積導入量では日本を上回り,世界トップになった。

 ただ,頭打ち状態だった国内の太陽光発電市場が再び上向く可能性が出てきたのも見逃せない。経済産業省が,住宅向けの太陽光発電を導入するための補助金制度を復活しようと動き出している。

 本書は,太陽電池部材メーカーの動向,太陽電池製造装置や周辺メーカーの動向,海外主要太陽電池メーカーの概要,太陽光発電システム導入のための行政および金融支援など,さらに太陽光発電の技術展望として,色素増感型や有機薄膜太陽電池などをまとめた。

 太陽電池モジュール開発,材料,製造装置メーカーの方々だけではなく,半導体関連メーカー,太陽電池用Siウェハの製造開発に関心の高い方々に本書のご一読をお勧めする。

(「はじめに」より)

2008年7月 株式会社シーエムシー出版 編集部

書籍の内容
〔I 市場編〕
第1章 太陽電池の概要

1. エネルギー需給の見通しと新エネルギーとしての太陽光発電
  新エネルギーと太陽光発電
2. 太陽電池の基本原理
  禁制帯幅が特性を決定
3. 太陽電池の種類
  3.1 結晶シリコン系太陽電池
    3.1.1 単結晶シリコン型太陽電池
    3.1.2 多結晶シリコン型太陽電池
    3.1.3 アモルファスシリコン型太陽電池
    3.1.4 CIS,CIGS太陽電池
4. 変換効率
5. 太陽光発電の発電費用

第2章 太陽電池(セル・モジュール)の国内市場
1. 市場規模推移と予測
  2007年の企業別シェア
  国内太陽電池市場規模

2. 太陽電池種類別シェア
  単結晶と多結晶のシェアが圧倒的

3. 主要国内メーカーの展開と動向
  3.1 シャープ
   シリコンと薄膜の両輪体制
   シリコン不足解消のため内製化
   葛城工場の生産能力増強
   堺に「21世紀型コンビナート」
   世界地域別の太陽電池戦略
   薄膜系生産拠点の世界進出
   伊エネル社と事業提携
   東京エレクトロンと合弁企業
  3.2 京セラ
   世界シェア第4位
   国内外に拠点
   多結晶シリコンへの投資
   シリコン使用量削減のための開発
  3.3 三洋電機
   世界シェア第6位
   経営再建も太陽電池は拡大へ
   HIT太陽電池の開発が特徴的
  3.4 三菱電機
   世界シェア9〜10番手
   生産量を年産500メガワットに引き上げ
   多雪地域に対応
   少電力損失のパワーコンディショナー
   再生可能エネルギー実証実験
   シリコン切断技術開発
   瞬間放充電キャパシタの開発
   尼崎に技術開発施設
  3.5 三菱重工業
   アモルファス太陽電池に注力
  3.6 カネカ
   薄膜シリコンハイブリッド太陽電池
   年産130メガワットへ増強
   変換効率を13.5%に
   他社との提携も視野
  3.7 富士電機システムズ
   アモルファス太陽電池の開発
   フレキシブルアモルファス太陽電池の量産
  3.8 ホンダソルテック
   2007年10月から量産開始
   CIGS系を選択
   国内一般住宅用から業務用へ
   海外への展開と自動車への搭載
   年産27.5メガワット
  3.9 昭和シェルソーラー
   2007年CIS太陽電池商業生産開始
   2つの工場体制に
   関東に個人住宅向け販売店
  3.10 日立製作所
   両面受光型太陽電池の開発
   両面受光型の特徴
   量産化,フェンス一体型で設置
   シリコン不足への対応
   スペースエナジーに技術移転
   会長がグリーンIT協議会会長に就任
  3.11 TDK
   プラスチックフィルム状のアモルファスシリコン太陽電池
   用途は時計など
  3.12 フジプレアム
   売上高の13%がクリーン・エコエネルギー部門
   球状シリコン太陽電池
   カナダのフォトワットとも提携
   月産1メガワットを
   独ショット・ソーラーからセルを調達
   フレキシブルや大型のモジュールを開発
  3.13 ソニー
   色素増感太陽電池の市場化迫る
   「事業化の可能性」との新聞報道も
   東京宣言
   ホームページでも示唆
   「既存製品搭載→パネル量産」か?
   市場地図を塗り替える可能性

第3章 太陽電池部材メーカーの動向
1. トクヤマ
   多結晶プラントの完成
   VLD法によるソーラー・グレード・シリコン析出
   プラントを増設
2. 三菱マテリアル
   拠点国内外に2か所
   増益にシリコン販売の好調
   四日市に設備増築
3. JEFスチール
   ソーラー・グレードで従来シリコンなみの変換効率
4. SUMCO
   伊万里にシリコンウエハ新工場
   ソーラー事業を拡大
5. 三井化学
6. 三井化学ファブロ
   ソーラーエバ
7. 三井・デュポンポリケミカル
   エバフレックス
   エバフレックス-EEA
   ハイミラン
   ナフサ高騰で価格値上げ
8. デュポン
   エバフレックス
   カプトン
   セントリグラス プラス
   Solamat
   テドラーフィルム
   ブタサイト
   次世代太陽光発電の研究を推進
9. 住友化学
   EVA封止材
   米国企業と提携して次世代太陽電池を開発

第4章 太陽電池製造装置,及び周辺メーカーの動向
1. 装置メーカー
  1.1 アプライドマテリアルズ
     ATONでシリコン結晶太陽電池用ウエハ製造装置を製造
     ロール・トゥ・ロール法「SmartWeb」
     「SunFabThinFileLine」で薄膜フィルム太陽電池モジュール製造装置を製造
     TFTと薄膜セル両製造装置を開発
     英国試験装置大手を買収
  1.2 アルバック
     ポストFPDとしての太陽電池製造装置製造
     中国・台湾など世界を視野に
  1.3 芝浦メカトロニクス
     太陽電池システム事業を拡大する方針
     事業部を統合
  1.4 トッキ
     キヤノンの狙いは太陽電池
     真空技術を太陽電池開発に応用

2. 周辺技術
  2.1 印刷技術
    2.1.1 大日本印刷
        色素増感太陽電池
        有機薄膜太陽電池
    2.1.2 FUJIFILMDimatix社
        カートリッジベースのプリンタでフィルム型有機太陽電池
    2.1.3 Nanosolar社
        ロール・ツー・ロール技術によるCIGS型太陽電池
  2.2 性能評価装置
    2.2.1 岩崎電気
        キセノンランプによる太陽電池性能装置
    2.2.2 山下電装
        数種の太陽電池評価装置
        生産ラインで内で評価する装置の発売
  2.3 るつぼ
    2.3.1 フェローテック
        シリコン単結晶引上装置用の石英るつぼを生産
        太陽光発電分野の売上構成比が伸びる
        中国企業から150台を受注
        韓国・欧州への攻勢
    2.3.2 コパレントマテリアル
        多結晶シリコン溶解るつぼを生産
    2.3.3 東洋炭素
  2.4 洗浄装置
    2.4.1 エス・イー・エス
        太陽電池の洗浄装置
        フルターンキーでの装置製造へ

第5章 海外主要太陽電池(セル・モジュール)メーカーの概要
1. ヨーロッパ系メーカー
  1.1 Qセルズ(ドイツ)
     主力はシリコン結晶,薄膜にも傾注
     シリコン使用量の低減
     シリコン調達を増強
     2010年1.5ギガワット規模の生産力を予測
     日本にも進出
  1.2 DeutscheCell(ドイツ)
     生産能力160メガワット
     チャージ・モニタリングで品質管理
     単結晶シリコン
     多結晶シリコン
  1.3 ショット・ソーラー(SchottSolar,独)
     アモルファス太陽電池の生産を増強
     米国工場はシリコン調達難
  1.4 イソフォトン(スペイン)
     マラガに新工場
     パスパリオスの新工場にも出資
2. 北米系メーカー
  2.1 ファースト・ソーラー(FirstSolar,米国)
     カドミウムテルル半導体太陽電池の製造
     大規模な研究開発
     マレーシアに生産拠点
     3.4ギガワット規模の契約
  2.2 シェル・ソーラー(ShellSolar,米国)
     CIS薄膜系太陽電池の開発に方針転換
  2.3 BPソーラー (米など)
     スペインのプラントを増強
3. アジア系メーカー
  3.1 SuntechPower(中国)
     生産量・売上高とも急激に拡大
     欧州を中心に市場展開
     日本への展開も
     シリコン供給
  3.2 モーテック(台湾)
     主力は結晶シリコン系
     米国企業にセルを供給
     多結晶シリコンの調達
  3.3 E-TonSolar(台湾)
     2008年末までに320メガワット規模に
     国からの補助,産学連携
  3.4 サンパワー(米系,フィリピン)
     パワーライト・コーポレーションを買収
     フィリピンで生産増強
     太陽光追跡型電池も

第6章 太陽光発電システム導入のための行政および金融支援など
1. 補助金制度
  設置補助が周辺機器の低価格化に影響した
  補助金制度の廃止
2. RPS法
  グリーン電力証書
  RPS法の課題
3. 東京都の政策
  3.1 「飛躍的な利用拡大」への政策
     金融機関も含めた役割分担
  3.2 環境税の導入
4. 規制緩和
  4.1 構造改革特区のマイクログリッド
  4.2 工場等制限法の撤廃
5. 欧州の売電制度
  ドイツ
  スペイン

第7章 太陽光発電市場の将来展望
1. 「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ」(PV2030)
  2030年に家庭用電力の2分の1程度を太陽電池
  2030年,7円/キロワット時の発電コストに
  次世代技術開発テーマと開発内容
2. CoolEarthエネルギー革新技術計画
  第二世代
  第三世代
  2014年までの各要素技術の目標
3. 色素増感太陽電池
  太陽電池開発技術
  基本原理
  特徴
  変換効率
  米国の開発目標
  特許状況
  ペクセル・テクノロジー「色素増感キャパシタ」の開発
4. 有機薄膜太陽電池
  基本原理
  特徴
  変換効率
  産業技術総合研究所
  三洋電機
  新日本石油
  コナルカ社(米国)
5. 量子ナノ構造太陽電池
  量子ドットと基本原理
  中間バンド構造太陽電池
  ホットキャリア太陽電池
  マルチエキシトン生成効果型太陽電池
  研究機関
6. 多接合型太陽電池
  基本原理
  モノリシック構造多接合セル
  メカニカルスタックセル
  量子ナノ構造膜,多接合セル
  量子ドット増感型多接合セル
  カネカ
  シャープ
  豊田工業大学
  NEDO「革新的太陽光発電技術研究開発」
  米国「VHESCプロジェクト」とEU「Fullspectrumプロジェクト」

〔II 技術編〕
第8章 CIS太陽電池の基礎

1. CIS太陽電池とは
  1.1 CIS太陽電池の特徴
  1.2 CIS太陽電池の開発の歴史
  1.3 CIS太陽電池のデバイス構造
  1.4 CIS太陽電池のバンドプロファイル
  1.5 CIS太陽電池の高効率化
  1.6 CIS薄膜の形成方法
    1.6.1 多元蒸着法
    1.6.2 セレン化法

第9章 色素増感太陽電池の研究開発
1. はじめに
  1.1 CIS太陽電池の特徴
2. 色素増感太陽電池の現在の最高性能
3. これからの課題
  3.1 大型セルの高性能化
  3.2 単一セルとモジュールの耐久性の向上
4. 研究開発動向
  4.1 導電性基板
  4.2 半導体光電極
  4.3 色素
  4.4 電解質
  4.5 対極
  4.6 セル,モジュール化技術
  4.7 その他
5. おわりに

第10章 有機薄膜太陽電池の課題と展望
1. はじめに
2. 発電原理とセル構造
3. 有機薄膜太陽電池の課題
4. 有機薄膜太陽電池の展望