バイオチップの技術と応用

技術者・研究者向けの専門書籍紹介

バイオチップの技術と応用

発刊日 2010年1月 ISBN 978-4-7813-0154-9
体 裁 A5判 255ページ

発刊にあたって
 バイオチップ技術の本格的展開は,DNAチップの開発に始まる。2000年から2001年にかけて出版したDNAチップ応用技術,DNAチップ応用技術IIにおいて紹介した技術は,今までは汎用技術として受け入れられているものも少なくない。近年,急速に開発が進められているプロテインチップ,糖鎖チップ,細胞チップなどの開発は,これら技術を基に発展している。例えば,DNAのアレイ化の際に用いられるスタンプ方式やインクジェット方式の高集積化やフォトリソグラフィーに基づく固相合成は,バイオチップの基板技術といえる。一方で,タンパク質や糖鎖,細胞をチップ化する上で新たな手法や様々なチップ材料の研究が進められている。また,これまで主にヒトゲノムを中心としたゲノム解析,あるいはポストゲノム解析が研究対象であったのに対し,環境モニタリングやヘルスケアなどのより身近な応用も対象とされてきている。

 ポストゲノム時代のバイオチップに望まれるのは,テーラーメイド医療や創薬開発を始め,食品産業,環境産業,ヘルスケアなどの広範な産業への貢献である。本書に収められた原稿は,バイオチップに関わる材料,検出手法,情報処理,それらに基づく応用の最新技術についてまとめたものであり,様々な分野の研究者・技術者の方々へ情報を提供できればと思っている。

(「はじめに」より)

2004年6月  松永 是


書籍の内容

【第1編 総論】
第1章 バイオチップの技術総論(松永是,岡村好子)
1. ポストゲノムシークエンスのアプローチ
2. プロテオームそして細胞レベルへ
3. バイオチップの応用
4. 本書をまとめるにあたって


【第2編 要素技術】
第1章 アレイ・チップ材料の開発
1. 磁性ビーズを利用したバイオチップ(田中剛,松永是)
1.1 はじめに
1.2 バイオアドレッシング技術
1.3 磁気計測技術のチップ解析への応用
1.4 磁性ビーズの開発状況
1.5 バイオ磁性ビーズの利用
1.5.1 バイオ磁性ビーズ表面への分子構築
1.5.2 タンパク質のアセンブリング技術
1.5.3 磁気プローブ
1.6 おわりに

2. 膜を利用したチップ(久本秀明)
2.1 はじめに
2.2 マイクロチャネル内界面重合に基づく高分子膜の作製
2.3 ガス透過膜としてのマイクロチャンネル内高分子膜
2.4 チャネル内高分子膜への酵素固定化に基づく基質透過・化学変換膜の作製
2.5 おわりに

3. ナノポーラス材料に基づくバイオチップ(松本太,益田秀樹)
3.1 はじめに
3.2 アルミナナノホールアレイ構造およびバイオチップ基板の作製
3.3 生体関連分子の二次元高密度パターニング
3.4 フロースルー型三次元DNAアレイの作製
3.5 おわりに

4. バイオチップの表面処理技術(内田勝美,長崎幸夫)
4.1 はじめに
4.2 DNAチップの表面処理
4.3 プロテインチップの表面処理
4.4 糖鎖チップの表面処理
4.5 細胞チップの表面処理
4.6 高感度化のためのチップ表面処理
4.6.1 SAMを利用した表面処理
4.6.2 プローブ分子の配向性を考慮した表面処理
4.6.3 ポリマーを利用した表面処理
4.7 おわりに

5. PCサーフェイステクノロジーによるバイオ分子高効率機能表面の創製(石原一彦)
5.1 はじめに
5.2 究極のバイオインターフェイスとは―PCサーフェイステクノロジー
5.3 バイオ分子の非特異的吸着抑制
5.4 バイオ分子の選択固体化
5.5 バイオ分子の安定化
5.6 PCサーフェイスを実装したバイオチップの実例
5.7 おわりに


第2章 バイオチップの検出技術開発
1. 分光学的手法および電気化学的手法(竹中繁織)
1.1 分光学的手法によるバイオチップの検出
1.2 電気化学的手法によるバイオチップの検出
1.3 おわりに

2. AFMによるバイオチップの加工と力学測定(中村史)
2.1 はじめに
2.2 AFMを用いたリソグラフィー技術
2.3 酵素を用いたAFMによる生体分子微細加工
2.4 生体分子相互作用の力学測定
2.5 おわりに

3. 検出のための装置・システム・試薬の開発(近藤恭光,田代英夫)
3.1 はじめに
3.2 ハイブリダイゼーション装置
3.3 検出装置・試薬
3.4 デジタル検出技術の開発
3.5 おわりに


第3章 バイオチップの情報処理技術
1. バイオチップデータ解析のためのバイオインフォマティクス技術(坊農秀雅
1.1 バイオチップとバイオインフォマティクス
1.2 バイオチップからのデータを用意する
1.3 バイオチップデータ解析のためのバイオインフォマティクス技術
1.3.1 チップに用いる配列データソース
1.3.2 機能アノテーションと結びつけて解析する
1.3.3 データを可視化する
1.4 おわりに

2. 発現プロファイルに基づいた遺伝子の高精度分類法:細胞・組織特異的な発現遺伝子のマイニング
  (中村由紀子,池村淑道,小笠原直毅,金谷重彦)
2.1 はじめに
2.2 時系列発現プロファイル解析
2.3 マイクロアレイ技術の植物遺伝子解析への応用
2.4 付録:BL-SOMのアルゴリズム


【第3編 応用・開発】
第1章 DNAチップの応用技術
1. 次世代遺伝子解析マイクロアレイの開発(棚村好彦,三澤弘明)
1.1 はじめに
1.2 従来のDNAハイブリダイゼーション検出チップ
1.3 新しい原理に基づくDNAハイブリダイゼーション検出チップの開発
1.4 おわりに

2. マイクロビーズを利用した発現解析―MPSS―(峰野純一)
2.1 はじめに
2.2 DNAマイクロビーズを用いた網羅的な発現解析
2.3 Megaclone
2.3.1 アンチタグマイクロビーズ
2.3.2 DNAマイクロビーズの作製
2.4 MPSS (Massively Parallel Signature Sequencing)
2.4.1 フローセル,エンコードアダプター,およびデコーダープローブ
2.4.2 MPSSによる塩基配列決定法
2.4.3 データ解析
2.5 データ紹介
2.6 おわりに


第2章 プロテインチップの応用技術
1. プロテインチップシステムの原理と臨床への応用(志和美重子)
1.1 はじめに
1.2 プロテインチップシステムの特徴と原理
1.3 Expression Difference MappingTM(EDM;発現解析)アプローチ
1.4 Interaction DiscoveryTM Mapping(IDM;相互作用解析)アプローチ
1.5 臨床への応用
1.6 おわりに

2. 昆虫ウイルスの多角体を用いたプロテインチップの開発(森肇,中澤裕,池田敬子)
2.1 はじめに
2.2 多角体へのタンパク質分子の固定化方法
2.3 多角体に固定化されたタンパク質の安定性
2.4 多角体へのリン酸化酵素の固定化とチップ作製
2.5 多角体へのアレルゲンの固定化とチップ作製
2.6 今後の展望

3. 抗体チップとDNAチップの比較(中山秀喜)
3.1 はじめに
3.2 抗体チップの現状
3.3 抗体チップ開発から,期待される波及技術


第3章 糖鎖チップの応用技術
1. 糖鎖マイクロアレイの開発動向(久野敦,内山昇,平林淳)
1.1 はじめに
1.2 第3のバイオチップ「糖鎖マイクロアレイ」の誕生
1.3 糖鎖マイクロアレイの種類
1.4 糖鎖マイクロアレイ応用研究の実際
1.5 おわりに

2. 糖鎖合成技術の開発(長堀紀子,西村紳一郎)
2.1 はじめに
2.2 糖鎖合成装置の開発:生合成プロセスを模倣した糖鎖自動合成装置“Golgi”
2.3 タンパク質提示基板としての糖鎖チップの利用
2.4 糖転移酵素チップの作製
2.5 おわりに


第4章 細胞チップの応用技術
1. 細胞・微生物チップの開発(彼谷高敏,安川智之,珠玖仁,末永智一)
1.1 はじめに
1.2 細胞・微生物パターニング
1.3 On-chip incubation
1.4 On-chip gene engineering

2. セロミクス研究のためのバイオチップ:オンチップ1細胞解析システム(安田賢二)
2.1 はじめに
2.2 細胞が蓄えた後天的情報を解明する手法:オンチップ・1細胞解析システム
2.3 オンチップ1細胞計測系を用いた同一遺伝子を持った姉妹細胞,親子細胞の相同性比較
2.4 細胞集団のコミュニティサイズ,ネットワークパターンが持つ後天的情報の解析
2.5 おわりに

3. 発光微生物を用いた環境モニタリング(阪口利文)
3.1 はじめに
3.2 システムの概要
3.3 計測の対象
3.4 発光微生物固定化チップの作製
3.5 発光微生物固定化チップからの生物発光
3.6 発光細菌固定化チップと簡易測定システムによるオンサイトBOD測定
3.7 発光細菌固定化チップを用いた実試料BODの測定
3.8 おわりに

4. 遺伝子機能解析の新しいツール:セルトランスフェクションアレイ(本間紀美,落谷孝広)
4.1 はじめに
4.2 アテロコラーゲンとは
4.3 Atelocollagen-based cell transfection arrayによるトランスフェクション
4.4 Atelocollagen-based cell transfection arrayの特長
4.5 Atelocollagen-based cell transfection arrayによる遺伝子機能解析
4.6 その他のトランスフェクションアレイ
4.7 おわりに

5. 免疫診断用マイクロウェルアレイ細胞チップ(藤城敏史,小幡勤,谷野克巳)
5.1 はじめに
5.2 免疫診断用マイクロウェルアレイチップの開発
5.3 作製プロセス
5.4 ウェルのパラメータと性能
5.4.1 ウェルのサイズ
5.4.2 ウェル形状
5.4.3 表面
5.4.4 ウェルピッチ
5.4.5 マーカー
5.5 おわりに

6. リンパ球チップ
  (岸裕幸,近藤佐千子,時光善温,本多立,本木和美,村口篤,民谷栄一,山村昌平,鈴木正康,藤城敏史,小幡勤,大永祟)
6.1 はじめに
6.2 抗原特異的Bリンパ球と抗体は1:1対応
6.3 リンパ球チップシステム
6.3.1 マイクロウェルアレイチップとスキャナ
6.3.2 抗原特異的リンパ球の検出
6.3.3 抗原特異的リンパ球の回収
6.4 従来の抗原特異的Bリンパ球の検出法との比較
6.5 リンパ球チップの応用
6.6 従来のモノクローナル抗体作製法との比較
6.7 おわりに


第5章 ラボオンチップの開発
1. バイオマイクロシステムの開発(森島圭祐)
1.1 はじめに
1.2 培養心筋細胞駆動を目指した足場材料の微細加工技術
1.3 心筋細胞駆動型バイオマイクロアクチュエーターとマイクロ流体制御デバイス
1.4 まとめおよび今後の展望

2. オンチップ細胞計測システムの開発(一木隆範)
2.1 はじめに
2.2 チップ上での細胞・微粒子の輸送および操作の物理
2.3 電気泳動による細胞輸送
2.4 電気泳動による細胞表面電位の評価
2.5 セルソーターチップ
2.6 おわりに

3. 電極集積化マイクロチャネルチップ(金幸夫)
3.1 はじめに
3.2 電極集積化マイクロチャネルチップの作製
3.3 電極集積化マイクロチャネルチップの応答特性
3.4 分光電気化学への応用
3.5 おわりに