ナノオプティクス・ナノフォトニクスのすべて

技術者・研究者向けの書籍紹介

ナノオプティクス・ナノフォトニクスのすべて


発刊日 2006年5月 ISBN 4-902410-07-9
体 裁 B5判・392頁


刊行のねらい
 20世紀は電気・電子の時代であった。19世紀末、エジソンはニューヨークに発電所を作り、街に電灯の明かりを灯し、映写機や蓄音機を作った。あらゆる機械は電力によって動き、情報もまた電気によって伝えられる。そして、いま21世紀が始まった。20世紀に花開いた電気工学は、21世紀にはナノテクノロジーフォトンテクノロジーにその役割の一部を譲ることになるであろうと考えられている。すでにテレビはブラウン管から液晶に代わり、銅線ケーブルは光ファイバーに代わりつつある。パソコンの中には、レーザーとレンズからなる光学顕微鏡であるCD・DVDが入っている。カーボン・ナノ材料やナノ・バイオテクノロジー、化合物半導体量子ドットや金属ナノ微粒子などのナノレベルで構造制御された材料の製造技術が確立され、自然界の材料にない奇異な機能を発現する材料設計・開発が進んでいる。

 考えてみれば、日本はもともと精密工学に強く光学技術に強かった。トランジスタ・ラジオやオーディオ、テープ・レコーダーなどのマイクロエレクトロニクス、時計や小型モーターなどのマイクロメカニクスは、日本が世界を文字通り先導してきたし、カメラ、顕微鏡、CD・DVD、液晶テレビなどの光技術も、長く日本の独壇場である。マイクロテクノロジーと光技術の日本の成功は、当然ナノテクノロジーフォトンテクノロジーの融合であるナノオプティクス・ナノテクノロジーへの日本の今後の貢献と責任を示唆する。

 実際、日本の研究者のこの分野の研究は世界をリードしており、世界の中で新しい科学と応用を開拓し続けている。監修者・編者らは、これまでにもいくつかの啓蒙書や報告書を出版してきたが、この機会にさらに日本と世界を代表する最先端の研究者がこの書物において一同に集まり、ナノオプティクス・ナノフォトニクスのstate-of-artを示すことは、今後の研究者の参入への呼び水となろうし、また異分野・異業界の研究者・ユーザーに対して、ナノ・オプティクス、ナノ・フォトニクスとのコラボレーションへの興味や熱意を刺激することになるであろう。本書を通じて、広い分野の読者からのナノオプティクス・ナノフォトニクスへの関心が高まれることを期待したい。


序 章 ナノオプティクス・ナノフォトニクスへの期待
 1 ナノの時代
 2 スペクトロスコピーの役割
 3 プラズモニクス
 4 バイオテクノロジーナノテクノロジーを繋ぐフォトンテクノロジー

第1章 ナノオプティクス・ナノフォトニクスの基礎
 1 ナノ計測工学の基礎
  1.1 はじめに
  1.2 ナノ計測の特徴
  1.3 各種プローブによるナノ計測
   1.3.1 ナノ計測に必要なプローブ
   1.3.2 走査型プローブ顕微鏡
  1.4 走査型近接場光学顕微鏡
   1.4.1 基本装置構成
   1.4.2 近接場光学顕微鏡用プローブ
 2 近接場光学の基礎
  2.1 界面のニアフィールドに存在する光 -エバネッセント波-
  2.2 エバネッセント波の強度発生
  2.4 微小開口によるエバネッセント波の発生と微小スポットの形成
  2.5 微細構造を利用した高分解能顕微鏡
 3 光MEMSの基礎
  3.1 はじめに
  3.2 マイクロ光学ベンチ
  3.3 フォトリソグラフィとマイクロマシニング
  3.4 表面マイクロマシニング
  3.5 バルクマイクロマシニング
  3.6 マイクロアクチュエータ
 4 プラズモニクスの基礎
  4.1 はじめに?100年前
  4.2 フォトンと表面プラズモンの結合
  4.3 表面プラズモン・センサ
  4.4 表面増強ラマン散乱
  4.5 金属針を用いた近接場顕微鏡
  4.6 プラズモニック・デバイス
 5 誘電体ナノ周期構造の基礎
  5.1 ナノ周期構造の光学的性質
  5.2 光波結合方程式と固有モード波
  5.3 1次元周期構造の分散面
  5.4 構造複屈折の強さと波長依存
  5.5 EMT
  5.6 EMTと厳密解析との使い分け
 6 フォトニック結晶の基礎
  6.1 フォトニックバンドと期待される現象
  6.2 作製法
  6.3 ナノレーザ,ナノ共振器
  6.4 VCSELとLED
  6.5 ナノ導波路とスローライト
  6.6 スーパープリズム光学系
 7 カーボンナノチューブの光学理論
  7.1 はじめに
  7.2 カーボンナノチューブの電子状態
   7.2.1  2次元グラファイト
   7.2.2  ナノチューブ
   7.2.3  有効質量近似
  7.3 光スペクトルと励起子効果
   7.3.1  光の偏光と選択即
   7.3.2  多体効果と励起子
  7.4 おわりに
 8 2光子吸収の基礎
  8.1 2光子吸収とは
  8.2 2光子吸収色素の分子設計
  8.3 2光子吸収の応用
   8.3.1 生体試料の観察
   8.3.2 生体機能制御
   8.3.3 三次元光メモリー
   8.3.4 三次元光造形
 9 フェムト秒レーザーの基礎
  9.1 フェムト秒パルスの発生
   9.1.1 フェムト秒パルスの作り方
   9.1.2 発生できるパルス幅の目安:フーリエ限界パルス
   9.1.3 フェムト秒パルスによる非線形現象
   9.1.4 フェムト秒発振器の基本構成
   9.1.5 なぜTi:Sapレーザーはレーザーで励起するのか?
   9.1.6 繰返し周波数は何で決まる?
   9.1.7 ファイバーからのフェムト秒パルス
  9.2 フェムト秒パルスの増幅
   9.2.1 チャープパルス増幅
   9.2.2 再生増幅器
  9.3 フェムト秒パルスを使う
   9.3.1 分散によるパルスの伸び
   9.3.2 集光強度から電界強度を求める
   9.3.3 レーザーの電場で揺さぶられる電子

第2章 ナノオプティクス・ナノフォトニクスによる観察、検出、分析
 1.近接場赤外分光
  1.1 はじめに
  1.2 赤外分光法
  1.3 近接場赤外顕微鏡
   1.3.1 赤外近接場プローブ
   1.3.2 装置構成
  1.4 近接場赤外分光計測・イメージング
   1.4.1 微小開口カンチレバー
   1.4.2 DFGを光源とした近接場赤外顕微鏡
   1.4.3 赤外自由電子レーザーを光源とした近接場赤外顕微鏡
  1.5 おわりに
 2.近接場光学顕微鏡による単一量子ドット分光
  2.1 はじめに
  2.2 半導体量子ドットについて
  2.3 単一量子ドット分光
  2.4 単一ドット分光のための近接場光学顕微鏡
  2.5 単一量子ドット分光の実例
  2.6 量子ドットの波動関数を見る
 3 近接場ラマン分光
  3.1 金属プローブを用いた近接場ラマン分光
  3.2 近接場ラマン顕微鏡とその偏光測定
   3.2.1 高開口数対物レンズによる偏光測定
   3.2.2 近接場プローブと偏光
   3.2.3 単層カーボンナノチューブの近接場偏光測定
   3.2.4 反射型近接場ラマン顕微鏡による歪みシリコンの物性評価
  3.3 近接場非線形ラマン顕微鏡
  3.4 おわりに
 4 偏光近接場光学顕微鏡
  4.1 はじめに
  4.2 偏光と物質の相互作用
  4.3 顕微鏡の基本原理
  4.4 装置構成
  4.5 観測例
   4.5.1 ナノインデント圧痕の応力分布
   4.5.2 AFMナノラビング
  4.6 おわりに
 5 近接場バイオイメージング
  5.1 はじめに
  5.2 近接場光学顕微鏡
  5.3 近接場露光技術を用いた高分解能顕微鏡
  5.4 生きている生体試料の観察
  5.5 おわりに
 6 ナノパターンドメディア
  6.1 次々世代光記録技術へ要求
  6.2 自己組織化によるナノパターンド近接場光メディアの形成
  6.3 自己組織化技術を用いたナノドット構造の作製手順
  6.4 実験結果と考察
   6.4.1 ナノドット構造体の配列規則性のPS-P2VP濃度依存性
   6.4.2 ナノドット構造体の密度のPS-P2VP分子量依存性
   6.4.3 金属薄膜上におけるナノドット構造体の形成
   6.4.4 金-ナノドットアレイ界面における表面プラズモンポラリトンの励起
  6.5 おわりに
 7 SIL(Solid Immersion Lens)光メモリ
  7.1 はじめに
   7.2 SILの種類と原理
   7.2.1 半球型SIL
   7.2.2 超半球型SIL
  7.3 SILの加工と加工・組み立て精度
  7.4 SIM
  7.5 SIL光メモリの開発の経緯
  7.6 SIL光ディスク装置
 8 ナノプラズモニック・ナノイメージング
  8.1 はじめに
  8.2 金属スラブのよる近接場イメージング
  8.3 金属ナノロッドアレイによる近接場イメージング
  8.4 おわりに
 9 第2高調波顕微鏡
  9.1 はじめに
  9.2 第2高調波発生
  9.3 第2高調波顕微鏡
  9.4 第2高調波顕微鏡による観察例
  9.5 おわりに
 10 高速AFM
  10.1 はじめに
  10.2 AFMのイメージング速度を決める因子
  10.3 デバイスの開発
   10.3.1 スキャナー
   10.3.2 動的PID制御
   10.3.3 微小カンチレバー
   10.3.4 光・熱励振
  10.4 バイオイメージング
 11 バイオプローブを用いたイメージング法とチップ解析法
  11.1 はじめに
  11.2 バイオプローブによるイメージング法
   11.2.1 蛍光性バイオプローブ概説
   11.2.2 既法の問題点と今後の展望
  11.3 バイオプローブによるチップ解析法
   11.3.1 光固定化法
   11.3.2 光固定化マイクロアレイと観察法
  11.4 おわりに

第3章 ナノオプティクス・ナノフォトニクスによる駆動、制御
 1 フォトクロミック液晶エラストマーによる光運動材料の開発
  1.1 はじめに
  1.2 フォトクロミック液晶高分子
  1.3 フォトクロミック液晶エラストマー
  1.4 フォトクロミック液晶エラストマーの光屈曲
  1.5 おわりに
 2 バイオナノマシンの運動計測と制御
  2.1 1分子生命科学の誕生
  2.2 キネシン1分子のnmの位置とpNの力測定
  2.3 紫外線を照射して精子鞭毛内ダイニン1分子の振動運動を開始させる
  2.4 モータータンパク質の1分子化学反応を蛍光分子を用いて可視化する
  2.5 蛍光粒子の運動を1nmの位置精度で測定する
  2.6 おわりに
 3 光マニピュレーション
  3.1 はじめに
  3.2 放射圧発生の原理
  3.3 光ピンセットによる操作
   3.3.1 誘導体粒子のマニピュレーション
   3.3.2 金属粒子のマニピュレーション
   3.3.3 光マニピュレーションによる回転操作
  3.4 光マニピュレーションを用いた力計測
  3.5 ナノ・オプティクスによる駆動、制御
 4 液滴駆動
  4.1 はじめに
  4.2 濡れ性と液滴移動の原理
  4.3 アゾベンゼン単分子膜の設計
  4.4 アゾベンゼン単分子膜を用いる光照射による液体の移動
  4.5 さまざまな光応答性表面
  4.6 おわりに

第4章 ナノオプティクス・ナノフォトニクスによる加工、制御
 1 近接場リソグラフィー
  1.2 近接場リソグラフィーとその課題
   1.2.1 近接場リソグラフィー
   1.2.2 近接場リソグラフィーの課題
  1.3 2層レジストを用いる高アスペクト比近接場光リソグラフィー
  1.4 マスクから発生する近接場光分布特性の解析
  1.5 おわりに
 2 2光子造形
  2.1 はじめに
  2.2  2光子マイクロ光造形法
   2.2.1  2光子吸収による光重合
   2.2.2  造形装置とマイクロ立体構造の試作
   2.2.3  マイクロ可動部品の作製
  2.3 2光子マイクロ光造形法の応用
  2.4 おわりに
 3 レーザーナノプロセッシング
  3.1 はじめに
  3.2 アブレーション加工
  3.3 デジタルエッチング
  3.4 ナノインプリント
  3.5 特殊光学装置の利用
  3.6 多光子吸収の利用
  3.7 ナノリップル構造の形成
  3.8 おわりに
 4 有機フォトニック結晶
  4.1 はじめに
  4.2 3次元フォトニック結晶の構造と作製法
  4.3 面心立方格子コロイド結晶の作製
  4.4 集光フェムト秒レーザ加工によるフォトニック結晶の作製
  4.5 おわりに
 5 細胞のナノサージェリー
  5.1 はじめに
  5.2 超短パルスレーザーによる細胞加工
  5.3 細胞機能の制御
  5.4 タンパク質の不活性化
  5.5 おわりに
 6 光マイクロセンサ
  6.1 はじめに
  6.2 変位センサ
  6.3 変位センサを内蔵した光マイクロセンサ
  6.4 生体情報計測用センサ
  6.5 バイオ蛍光センサ
  6.6 おわりに
 7 MEMSプローブ
  7.1 はじめに
  7.2 開口型近接場光学プローブ
  7.3 ハイブリッド型近接場光プローブ
  7.4 ボータイ型近接場プローブ
  7.5 MEMSプローブアレイ
 8 力学的・化学的機能を有する生体組織集積化バイオMEMSの開発
  8.1 はじめに
  8.2 心筋細胞駆動型バイオアクチュエータによるマイクロ構造物の駆動
   8.2.1 心筋細胞駆動型ハイドロゲルマイクロピラーアクチュエータ
   8.2.2 心筋細胞駆動型PDMSマイクロピラーアクチュエー
  8.3 心筋細胞駆動型マイクロポンプの開発
   8.3.1 心筋細胞シート移植法の開発
   8.3.2 心筋細胞シートによる流体駆動の実証
   8.3.3 超微量型心筋マイクロポンプ機能の実証
  8.4 今後の展開
 9 MEMSデバイスと集積化
  9.1 はじめに
  9.2 外部光学系
  9.3 機能の集積
  9.4 数の集積
  9.5 おわりに
 10 フォトクロミック
  10.1 近接場光記録
  10.2 3次元光記録
  10.3 フォトメカニカル効果
  10.4 単一分子光メモリ
  10.5 おわりに
 11 導電性単一分子ワイヤー
  11.1 はじめに
  11.2 電気化学エピタキシャル重合
    11.2.1 モノマー・ヨウ素混合系
    11.2.2 表面核埋込法
  11.3 異種分子ワイヤの電気化学的接続
  11.4 おわりに
 12 メタマテリアル
   12.1 はじめに
   12.2 研究の動向
   12.3 誘電率の制御方法
   12.4 透磁率の制御
   12.5 今後の展開

第5章 ナノオプティクス・ナノフォトニクスによる発光、通信
 1 ナノフォトニックデバイス
  1.1 はじめに
  1.2 ナノフォトニック加工
  1.3 ナノフォトニックデバイス
  1.4 ナノフォトニックシステム
  1.5 おわりに
 2 負誘電体ナノ構造の熱輻射
  2.1 共振器による自然放出の制御
  2.2 熱輻射制御の原理
  2.3 負誘電体微小共振器における熱輻射
  2.4 負誘電体周期構造における熱輻射
  2.5 応用
 3 プラズモニック発光素子
  3.1 はじめに
  3.2 プラズモニック結晶
  3.3 プラズモニック結晶による蛍光増強
  3.4 プラズモニック・バンドギャップ・レーザー
   3.4.1 吸収損失の低減
   3.4.2 輻射損失の低減
  3.5 プラズモニック結晶の有機ELへの応用
  3.6 おわりに
 4 面発光半導体レーザ
  4.1 はじめに
  4.2 発光材料と共振器形成技術
  4.3 長波長帯面発光レーザ
  4.4 波長集積・制御技術
  4.5 金属ナノ構造面発光レーザと光近接場
  4.6 おわりに
 5 導波モード共鳴格子
  5.1 導波モード共鳴格子
  5.2 格子構造と反射特性
  5.3 導波モード共鳴格子の応用
  5.4 共鳴波長の外部制御
  5.5 格子作製における注意点
 6 ナノ格子反射防止フィルタ
  6.1 はじめに
  6.2 SWGを用いた反射防止構造の特性と応用
  6.3 反射防止構造の光学設計
  6.4 反射防止構造の製作技術
  6.5 LEDへの応用
 7 フォトニック結晶ファイバー
  7.1 はじめに
  7.2 PCF(Photonic Crystal Fiber)
   7.2.1 実効屈折率モデルによるPCFの評価
   7.2.2 分散特性
  7.3 PCFの作製と超短パルス伝搬特性
   7.3.1 PCFの作製
   7.3.2 偏波保存(複屈折)PCF
  7.4 PBF(Pthonic Bandgap Fiber)
   7.4.1 PBFの原理
   7.4.2 低損失PBF
  7.5 おわりに