機能性微粒子とナノマテリアルの開発

技術者・研究者向けの書籍紹介

機能性微粒子とナノマテリアルの開発 〜材料設計のためのナノテクノロジー〜


発刊日 2004年5月 ISBN 4-902410-02-8
体 裁 B5判・301頁


刊行のねらい
  新たな技術革新を引き起こす科学技術としてナノテクノロジーが大きな注目をあびている。一般的には情報産業・バイオ産業・環境産業・エネルギー産業・材料産業・医療産業などの諸分野を改変・改革するべース科学技術として認識されている。顔料・染料・あるいは超微粒子を対象とした「ナノの世界」は、その歴史は古いけれども、経験的実験からのみ実用化されていたのが過去の状況である。

 しかし、20世紀後半から21世紀になり、ナノ次元の観察あるいは測定が可能なX線分析または電子顕微鏡関連の機器が進歩したことから、これまでとは異なる経験プラスαの実験が可能になり、改めて「ナノの世界」が研究対象に浮上してきた。すなわち、微粒子・超微粒子・分子を新しい目で見直すことが大切であり、21世紀の大きな課題である。これらの粒子・分子が関係するナノテクノロジーは、原子・分子・ナノスケールで構造と機能を制御する物質・材料・デバイスおよびプロセス・システムの科学と定義されている。

 本書は、「機能性微粒子とナノマテリアルの開発―材料設計のためのナノテクノロジー」と題して、現在の我が国における最先端の研究を進めている研究者を著者として選択し、その研究ならびに関連事項について解説いただいたものである。本書の構成は、(1)自己集合・界面構築による機能性微粒子の設計、(2)機能性微粒子の構造制御、(3)機能性微粒子の配列設計、(4)機能性微粒子の活用設計、(5)機能性微粒子の構造設計、に大別される。

 機能性微粒子の構造制御・配列設計・活用設計・構造設計などは、各執筆者のオリジナル研究を中心にまとめられており、先端技術・研究の内容を理解くだされば幸いである。なお、ナノマテリアル開発における微粒子の役割理解も可能であり、参考になるであろう。個々の課題を相互に参考とされ、総合的に活用していただきたい。

 本書に取上げた材料設計のための解説は、今後の「機能性微粒子の研究・開発・応用」ならびに「ナノマテリアルの開発・応用」に携わる方々にとって、多面的な思考の基盤になるであろう。読者が本書を座右の書として活用していただき、得られた「知識・情報」を基に、新規なオリジナリティのある研究・開発・実用化を実現することを切望する。(本書まえがきより)


[第T編 自己集合・界面構築による機能性微粒子の設計]

第1章 自己組織化と結晶形態
 1. はじめに
 2. 「自己組織化」とは何か
 3. 結晶形態の変化(1) ―多面体から樹枝状へ―
 4. 結晶形態の変化(2) ―より複雑に、階層的に―
  4.1 自己相似構造
  4.2 らせん
  4.3 一次元成長からの発展 ―ひげ結晶・繊維・ツノ状・チューブ
  4.4 二次元成長からの発展 ―花弁状・多孔質・フィルム・層状
 5.おわりに ―微粒子と形態形成

第2章 化学的発想による微粒子の自己組織化とナノテクノロジー 1.はじめに
 2.金属ナノ粒子の様々な低次元自己組織化
 3.可視光波長程度の大きさをもつ粒子の秩序だった集積構造による材料形成
 4.おわりに

第3章 ナノテクノロジーの新基盤物質としての金属酢体ポーラス材料
 1. ナノ空間を有する金属酢体ポーラス材料
 2. 吸着材料としての多孔性配位高分子
 3. ゲスト分子に応答する動的多孔性配位高分子
 4. ナノチャンネルラボラトリー
 5. 多孔性配位高分子のこれから ―空間構造の多彩さと新しい機能化学

第4章 ナノ細孔体の機能と金属ナノ細孔体の構築
 1.はじめに
 2.ナノ細孔体の特徴と機能
 3.ナノ細孔体の構築
 4.金属ナノ細孔体
  4.1 ナノ細孔性白金(Nanoporous Platium:NP-Pt)
  4.2 ナノ細孔性ニッケル(Nanoporous Nickel:NP-Ni)

第5章 界面構築による設計とナノテクノロジー
 1.はじめに
 2.界面構築の考え方と設計
 3.界面構築の設計と表面処理(改質)
 4.表面改質を利用する界面構築のとらえ方

第6章 微粒子の液中分散・凝集制御のための表面特性評価
 1. はじめに
 2. 粉体の表面特性の評価
  2.1 浸漬熱測定による粉体表面特性の評価
  2.2 冷却DSCを用いた粉体表面特性の評価
  2.3 電位差滴定を用いた粉体表面特性の評価
 3. 超音波減衰分光法により評価した液中粒子分散状態と粉体表面特性
 4. おわりに


[第U編 機能性微粒子の構造制御]

第1章 ナノテクノロジーの基盤技術 ―分子転写による無機合成法の進展
 1. はじめに
 2. 分子テンプレート法によるメソポーラス構造体の合成
  2.1 酸化物、酸素酸塩、硫化物および単体金属系メソポーラス構造体
   2.1.1 イオン性および非イオン性界面活性剤を用いた合成
   2.1.2 ブロックコポリマーを用いた合成
  2.2 無機/有機ハイブリッド・有機ポリマー系メソポーラス構造体
  2.3 ネガ型メソ構造体
   2.3.1 メソポーラスカーボン
   2.3.2 メソポーラス白金
 3. 分子テンプレート法によるナノチューブ構造体の合成
  3.1 酸化物
  3.2 金属
 4. テンプレート法によるナノ粒子の構造・形態制御
 5. おわりに

第2章 骨伝導性生体硬組織代替材料
 1. 生体硬組織代替材料とは
 2. HAP/PSZ系生体硬組織代替材料
 3. HAP/PSZ複合微粒子を用いる生体硬組織代替材料
  3.1 HAP/PSZ複合微粒子の調製
  3.2 HAP/PSZ複合微粒子の焼結
  3.3 HAP/PSZ複合焼結体の化学組成、細胞毒性および機械的強度
   3.3.1 化学組成
   3.3.2 細胞毒性
   3.3.3 機械的強度
  3.4 骨伝導
 4.おわりに

第3章 ナノ粒子の液相合成と微細構造制御
 1. はじめに
 2. 液相合成法の概要
  2.1 化学沈殿法
  2.2 ゾルゲル法
  2.3 逆ミセル法
 3. 半導体ナノ粒子の表面修飾
  3.1 コアシェル化
  3.2 水溶化と生体親和性の付与
 4. 形態の制御
 5. 粒子の応用例
 6. おわりに

第4章 長残光性アルミン酸塩蛍光体の合成と特性
 1. はじめに
 2. 長残光性アルミン酸塩蛍光体の合成法
 3. 長残光性アルミン酸塩蛍光体の特性
  3.1 発光特性
  3.2 残光特性
  3.3 耐光特性
  3.4 耐熱特性
  3.5 耐水特性
 4. 長残光性の発光メカニズム
 5. おわりに

第5章 超音波法によるポリマー微粒子の調製と形態制御
 1. はじめに
 2. 超音波の特性
 3. 超音波照射による大きさの異なるポリスチレン(PS)粒子の調製
 4. 低周波の超音波を用いた穴や細孔を有するPS粒子の調製
 5. 高周波超音波を用いた平らな表面を有するPS粒子の調製
 6. 低分子量の油を内包したPSカプセルの調製
 7. おわりに

第6章 振動オリフィス法による色素含有・光共振用微小球の合成
 1. はじめに
 2. 実験
 3. 微小球の諸特性
 4. 将来の展開

第7章 ナノパーティクルの調製と薬物送達
 1.はじめに
 2.DDSに用いられる薬物担体(ナノドラッグキャリヤー)の種類と特性
  2.1 ナノカプセル, Nanocapsule
  2.2 ナノスフェア, Nanosphere
  2.3 リピッドエマルション(リピッドナノスフェア)
  2.4 リポソーム(リピッドベシクル)
 3.DDSに用いられる薬物担体(ナノドラッグキャリヤー)の調製法
  3.1 ナノカプセルの基本的な調製法
  3.2 ナノスフェアの基本的な調製法
  3.3 リピッドエマルション(リピッドナノスフェア)の基本的な調製法
  3.4 リポソーム(リピッドベシクル)の基本的な調製法
 4.おわりに

第8章 ポリマー微粒子の機能と応用展開
 1. はじめに
 2. ポリマー微粒子の機能
  2.1 ポリマー微粒子の機能化
  2.2 ポリマー微粒子の帯電特性
  2.3 粉体の表面改質
 3. ポリマー微粒子の用途展開
  3.1 表示・記録材料分野
   3.1.1 トナー用添加剤
   3.1.2 PLD用粒子
   3.1.3 インクジェット用粒子
   3.1.4 液晶スペーサ
   3.1.5 文具用粒子(消せるボールペン)
  3.2 フィルム・テープ用
   3.2.1 光拡散フィルム用
   3.2.2 フィルムアンチブロッキング
   3.2.3 異方導電性接着テープ
  3.3 成形加工分野
   3.3.1 セラミックス空孔形成剤
   3.3.2 光拡散板
   3.3.3 人造大理石用低収縮剤
  3.4 その他
   3.4.1 化粧品用
   3.4.2 艶消し塗料用
   3.4.3 塗料顔料
   3.4.4 紙塗工剤用


[第V編 機能性微粒子の配列設計]

第1章 セラミックス・ナノ微粒子系の焼結:界面現象のシミュレーション
 1.はじめに
 2.分子動力学的シミュレーション:古典的原子間相互作用模型とタイトバインディング
 3.セラミックス・ナノ微粒子間のネック形成過程
  3.1 SiN4ナノ微粒子のネック形成初期過程
  3.2 SiCナノ微粒子のネック形成初期過程のTB-MDシミュレーション
 4.セラミックス・ナノ微粒子集合体の焼結初期過程
  4.1 窒化珪素ナノ微粒子集合体
  4.2 炭化珪素ナノ微粒子集合体
 5.今後の展望

第2章 ナノ粒子の二次元規則配列法
 1.はじめに
 2.自己集積化による二次元規則配列
 3.異相界面におけるナノ粒子の二次元規則配列
  3.1 コロイド溶液の基板上乾燥過程における規則配列
  3.2 気液界面における規則配列
  3.3 固液界面における規則配列

第3章 可視光反応型光触媒の創製―層状化合物および低次酸化物の利用
 1.はじめに
 2.半導体の層間包接
 3.層状化合物への遷移金属の付活
 4.低次酸化物光触媒
 5.おわりに

第4章 可視光反応型光触媒の創製―低温プラズマ処理の応用
 1. はじめに
 2. 酸化チタン
 3. 低温プラズマ
 4. プラズマ処理
 5. 可視応答性の評価
 6. おわりに

第5章 自己形成によるシリコン球体チェーンの作製技術
 1.はじめに
 2.VLS結晶成長メカニズム
 3.シリコン・ナノ結晶チェイン
  3.1 作成法
  3.2 構造
  3.3 成長メカニズム
 4.おわりに

第6章 金ナノ粒子分散ポリマーの調整と微細加工への応用
 1. はじめに
 2. 金ナノ粒子分散ポリマーの調整
  2.1 ナノ粒子分散ポリマー
  2.2 ポリマーの特性
 3. 微細加工への応用
  3.1 レーザー加工材料
  3.2 マスク材への応用
  3.3 転写モールド
 4. 透明基板へのマーキング
 5. おわりに

第7章 微粒子設計のための開発支援ツール―集束イオンビーム・プローブ顕微鏡技術


[第W編 機能性微粒子の活用設計]

第1章 角柱状酸化チタン光触媒の開発と応用
 1.はじめに
 2.角状酸化チタンの合成方法
  2.1 酸化チタン結晶核の合成
  2.2 原料ゾル溶液の組成と酸化チタン粒子の形状
 3.角柱状酸化チタンの光触媒活性
 4.角柱状酸化チタンの空気浄化機への応用
 5.おわりに

第2章 光触媒シリカゲルの開発と応用
 1.はじめに
 2.光触媒とは
 3.光触媒シリカゲルの開発コンセプト及び特長
 4.光触媒シリカゲルのキャラクタリゼーション
 5.光触媒シリカゲルの光触媒性能
 6.おわりに

第3章 希土類―鉄―ホウ素系高性能磁石の世界
 1.永久磁石の種類と性能評価
 2.微粒子配向成型による高性能磁石
 3.高性能化に必須の基盤技術
 4.R-Fe-B磁石の応用
 5.おわりに

第4章 機能性伝熱材料を用いた高密度冷熱輸送
 1.はじめに
 2.マイクロカプセルの評価
 3.スラリーの流動・伝熱特性
 4.おわりに


[第X編 機能性微粒子の構築設計]

第1章 自己調和カプセル型球状セメントの調整と物性
 1.セメントの球状化の意義
 2.セメント粒子の球状化方法
 3.「自己調和」による球状セメントの生成プロセス
 4.球状セメントの諸物性
  4.1 粉体物性
  4.2 コンクリートの物性
 5.おわりに

第2章 鉛フリーはんだ粉末の表面改質方法と応用の実例
 1.はじめに
 2.はんだ粉末の表面改質方法
  2.1 はんだ粉末表面へのコーティングによる改質
  2.2 はんだ粉末表面の化学的改質
 3.表面改質したはんだ粉末を用いたクリームはんだ特性の実例
  3.1 粉末およびクリームはんだの製造方法と評価方法
  3.2 クリームはんだの特性
  3.3 粉末および皮膜の特徴

第3章 酸化チタン複合炭酸塩粒子の合成とその特性
 1.はじめに
 2.酸化チタン―炭酸カルシウム複合粒子
  2.1 合成
  2.2 特性
  2.3 応用
 3.酸化チタン―管状塩基性炭酸マグネシウム複合粒子
  3.1 合成
  3.2 特性
  3.3 応用
 4.おわりに

第4章 微粒シラスバルーンの作製と応用
 1.はじめに
 2.天然ガラス原料
  2.1 ガラス質火山岩
  2.2 ガラス質火山砕屑物
 3.パーライト
 4.シラスバルーン
 5.微粒シラスバルーン
 6.応用技術
  6.1 微粒パーライト
  6.2 セラミックスボールを熱媒体に用いた媒体流動層
  6.3 マイクロメタルバルーン(MMB)
  6.4 その他
 7.おわりに

第5章 分子がつくる脂質ナノチューブ
 1.はじめに
 2.脂質ナノチューブの歴史的背景とそのサイズ分布
 3.カシューナッツ殻油から最小の脂質ナノチューブをつくる
 4.脂質ナノチューブは円筒層状構造
 5.金ナノ微粒子を中空シリンダー中に充填して並べる
 6.脂質ナノチューブ1本の機械的物性とその応用
 7.有機系一次元ナノ構造を鋳型にしてシリカナノチューブをつくる
 8.径10―100nmのナノ流路やナノ反応容器としてつかう
 9.おわりに

第6章 Jet-mixing法による多価金属脂肪酸塩の微粒子化と応用
 1.はじめに
 2.多価金属脂肪酸塩微粒子の製法
 3.多価金属脂肪酸塩微粒子の特徴
 4.金属石鹸微粒子の応用
  4.1 溶媒に対する増粘効果
  4.2 樹脂薄膜に与える効果
  4.3 粒子表面の改質効果
 5.おわりに

第7章 キャビティアークジェット法によるカーボンナノホーン粒子の簡易合成
 1.はじめに
 2.レーザ蒸発法
 3.キャビティアークジェット法
 4.おわりに

第8章 超臨界二酸化炭素を利用した新しいリポソーム調製技術
 1.はじめに
 2.超臨界流体
 3.リポソーム調製装置
 4.超臨界逆相蒸発法によって得られたリポソームの特徴
 5.リポソーム形成プロセス
 6.リポソームの連続生産ならびに種々の有効成分の内包
 7.おわりに

第9章 有機ゲル化剤ナノファイバー利用による無機ナノファイバーの創製
 1.はじめに
 2.有機ゲル化剤の作るナノファイバー
 3.シクロヘキサン誘導体のゲル化剤を利用した無機ナノファイバーの創製
 4.アミノ酸誘導体のゲル化剤を利用した無機ナノファイバーの創製
 5.おわりに

第10章 マイクロ流体技術を適用した均一粒径液滴微粒子の製造
 1.はじめに
 2.液滴化の一般的な技術
 3.マイクロ流体技術の一般的な微細加工技術
 4.マイクロ流体技術による液滴生成の基本技術
 5.マイクロ流体技術を適用した均一粒径液滴微粒子の製造
 6.均一微粒子の用途
 7.マイクロ流体技術の課題