コアシェル微粒子の設計・合成技術・応用の展開

技術者・研究者のための技術書籍紹介

コアシェル微粒子の設計・合成技術・応用の展開

発刊日 2010年7月 ISBN978-4-7813-0262-1
体 裁 B5判,246頁

刊行にあたって
 機能材料の創製にあたり,複数の性質を同時に発現させたいとき,特に相反する性質を一つの物体に組み入れようとするとき,研究者・技術者は「いかにして複数の成分をひとつの物体に組み入れるか」という命題に取り組むことになる。さらに,複数の性質の発現方法や作製プロセスの簡便さ,再現性,コストなども考慮しなければならない。
 昨今,これらを可能にする新素材として,コアシェル微粒子に注目が高まっている。コアシェル微粒子のコア部とシェル部の構造デザインを化学的に調製することで,これまでにないバラエティに富んだ機能材料を設計・合成することができる。
 本書では,第I編でコアシェル微粒子の概要について,第II,III編で注目されるコアシェル粒子の合成方法,エレクトロニクス,バイオ分野などへの新展開について紹介した。さらに,別枠のコラム欄でコアシェル微粒子の実用化例をいくつかとりあげた。この本をきっかけに,読者のインスピレーションが刺激され,今後,産学あらゆる場面での奇想天外なコアシェル微粒子が出現することを期待する。


書籍の内容
【第I編 概論】
第1章 コアシェル粒子の構造と合成法
(川口春馬)
1. はじめに
2. コアシェル粒子の作製
  2.1 コア,シェルともモノマーからスタートするコアシェル粒子の合成

  2.2 溶解したポリマーとモノマーの組み合わせによるコアシェル粒子の作製

  2.3 ブロック共重合体からのコアシェル粒子の作製

  2.4 コア粒子存在下でシェル層を作ることによるコアシェル粒子の作製

3. おわりに
第2章 コアシェル微粒子の用途展開(石川理)
1. はじめに
2. 有機有機コアシェル粒子の応用例
  2.1 難燃剤粒子

  2.2 蓄熱材粒子

  2.3 微粒子発泡剤

  2.4 樹脂改質材

  2.5 光学フィルム用粒子

  2.6 医療用カプセル粒子

  2.7 紙塗工用ラテックス

3. 有機/無機複合コアシェル粒子の応用例
  3.1 ナノイオニクス

  3.2 反応触媒

  3.3 高耐久性塗料用バインダー

  3.4 樹脂改質材

4. コアシェル粒子の量産化
5. おわりに
【第II編 デザインと合成に関する新展開】
第1章 交互積層法を利用したコアシェル粒子・中空カプセルの作製と機能材料への応用
(片桐清文,大幸裕介,武藤浩行)
1. はじめに
2. コロイド粒子への交互積層によるコアシェル粒子と中空カプセルの作製
3. 交互積層コアシェル粒子を利用したナノ粒界制御セラミックス複合材料の作製
4. 交互積層コアシェル粒子を利用した燃料電池固体電解質プロトン伝導体の作製
5. 外部刺激に応答して内包物を放出する中空カプセル
6. イオン液体内包カプセルを利用した高感度センサ
7. おわりに
第2章 界面反応法によるシェル層の構造制御(田中眞人)
1. はじめに
2. 界面重縮合法
3. 液滴合一法
4. シード重合法
5. 界面反応法
第3章 粉体存在下の重合反応を利用したポリマーコーティング微粒子の合成(長谷川政裕)
1. はじめに
2. 微粒子のポリマーコーティング法の種類と特徴
3. 水系析出重合反応を利用したポリマーコーティング
4. メカノケミカル重合法によるポリマーコーティング
5. おわりに
第4章 グラフト重合によるコアシェル微粒子の調製(谷口竜王
1. はじめに
2. ATRPによるコアシェル微粒子の調製
3. RAFTによるコアシェル微粒子の調製
4. NMPによるコアシェル微粒子の調製
5. その他の手法によるコアシェル微粒子の調製
6. おわりに
第5章 高分子反応を利用したコアシェル粒子の合成(飯澤孝司)
1. はじめに
2. 反応のメカニズム
3. 高分子粒子表面からの化学修飾によるコアシェル粒子の合成
  3.1 加水分解によるコアシェル粒子の合成

  3.2 固相ペプチド合成用のコアシェル支持体の合成

4. ポリアクリル酸ゲルの化学修飾によるコアシェル型ゲルの合成と応用
  4.1 ポリアクリル酸ゲルの化学修飾によるコアシェル型ゲルの合成

  4.2 コアシェル型ゲルの応用

5. おわりに
第6章 マイクロリアクターを利用するコアシェル粒子の設計と合成(西迫貴志)
1. はじめに
2. マイクロ流路の分岐構造を用いた乳化技術
  2.1 概要

  2.2 マイクロ流路装置の材料

  2.3 マイクロ流路の加工手法

3. マイクロ流路の分岐構造を用いた多相エマルション滴の生成
  3.1 概要

  3.2 装置構成と表面処理

  3.3 単分散多相エマルションからの微粒子調製

4. 高分子コアシェル粒子の作製事例
  4.1 磁性コアシェル粒子

  4.2 親水性-疎水性粒子

  4.3 フォトニック結晶

5. おわりに
第7章 ピッカリングエマルション法によるコアシェル粒子の合成(藤井秀司,岡田正弘,古薗勉,福本真也)
1. はじめに
2. ピッカリングエマルション
  2.1 ピッカリングエマルションとは

  2.2 ハイドロキシアパタイトナノ粒子安定化ピッカリングエマルション

3. ピッカリングエマルション法によるコアシェル粒子の合成
  3.1 コアシェル型汎用高分子粒子の合成

  3.2 コアシェル型生体吸収性高分子粒子の合成

  3.3 生体吸収性多中空高分子粒子の合成

4. 生体吸収性高分子コア/HApシェル複合粒子の細胞接着性評価
5. おわりに
【第III編 機能に関する新展開】<光学・色材・エレクトロニクス>
第1章 セルロースからの三原色マイクロビーズの調製とその環境浄化色材への展開
(永岡昭二,伊原博隆)
1. はじめに
2. セルロースの利用
3. ビスコース相分離法による無機材料の複合化
4. 三元造粒
5. 流動特性(コロガリ度)の評価
6. 紫外線照射による退色性の評価
7. おわりに
第2章 蛍光性ナノ粒子のバイオセンシング・イメージングへの応用(大庭英樹)
1. はじめに
2. タンパク質や生体リガンドのバイオセンシング
  2.1 イムノクロマトグラフィーによるバイオセンサーへの応用

  2.2 フローサイトメトリーへの応用

  2.3 多色同時リガンドセンシング

3. 量子ドットによるバイオアッセイ
  3.1 蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)への応用

4. 量子ドットを用いての生体変異検出
  4.1 in vitroでの変異検出

  4.2 in vivoでの変異検出

5. まとめ
第3章 コアシェル型温度応答性ミクロゲルの二段階体積相転移と蛍光エネルギー移動(前田寧)
1. 温度応答性ミクロゲルとは
2. コアシェル型温度応答性ミクロゲルの二段階体積相転移
3. 温度応答性ミクロゲルによる調光
4. 温度応答性蛍光ミクロゲル
5. おわりに
第4章 コアシェル型粒子の合成とその粒子からなるコロイド結晶(中村浩)
1. はじめに
2. コロイド結晶の応用展開とコアシェル粒子の必要性
3. チタニアナノシートをコートしたコアシェル型粒子
  3.1 高屈折率シェルを有するコアシェル型粒子

  3.2 LBL法によるチタニアナノシートコート粒子の合成

  3.3 チタニアナノシートコート粒子の特性

  3.4 チタニアナノシートコート粒子からなるコロイド結晶の作製

  3.5 チタニアナノシートコート粒子からなるコロイド結晶の光学特性

4. ポリマーをグラフトしたコアシェル型粒子
  4.1 コロイド結晶の固定化と有機溶媒に分散するコアシェル型粒子

  4.2 PMMAグラフトシリカ粒子の合成

  4.3 PMMAグラフトシリカ粒子からなるコロイド結晶の作製と固定化

  4.4 高密度ポリマーブラシをグラフトしたコアシェル粒子の合成とその粒子からなるコロイド結晶

  4.5 架橋ポリマーコア/非架橋ポリマーシェル粒子の合成とその粒子からなるコロイド結晶

5. おわりに
第5章 バインダーラテックス(荒井健次)
1. はじめに
2. バインダー機能
3. ラテックスのフィルム形成過程
4. ラテックスの製造方法とコアシェル構造
5. コアシェル構造とフィルム形成性
6. 顔料塗工用ラテックスへの応用
  6.1 顔料塗工用バインダーラテックス

  6.2 顔料塗工紙の表面強度とラテックス物性

  6.3 顔料塗工用バインダーラテックスのコアシェル構造化

  6.4 有機白色顔料

  6.5 バインダーピグメントラテックス

7. 電子線トモグラフィー法を用いた粒子内部構造の観察
8. おわりに <バイオ>
第6章 コアシェル型微粒子を組み込んだゲル・シート状バイオマテリアル(村上義彦,内田裕介,諸石眸)
1. はじめに
2. 生体組織に接着するゲル
3. コアシェル型「二層構造」微粒子を組み込んだ「ゲル」状バイオマテリアル
4. コアシェル型「三層構造」微粒子を組み込んだ「ゲル」状バイオマテリアル
5. コアシェル型「二層構造」微粒子を組み込んだ「シート」状バイオマテリアル
6. おわりに
第7章 アフィニティ磁性微粒子とスクリーニング自動化システム(畠山士,半田宏)
1. はじめに
2. アフィニティ精製技術の歴史
3. コア(フェライト)シェル(有機高分子ポリマー)型微粒子(FGビーズ)の作製
4. リガンド固定化FGビーズの作製とアフィニティ精製
5. FGビーズを用いたアフィニティ精製の自動化
6. おわりに
第8章 酵素と多相系高分子からなる酵素内包コアシェル型ナノ組織体(原田敦史)
1. はじめに
2. ポリイオンコンプレックスミセル
3. 酵素内包ポリイオンコンプレックスミセル
4. 可逆的なミセル形成に同期した酵素機能のON-OFF制御
5. ナノスコピック酵素反応場としてのミセル内核
6. コア架橋型酵素内包ポリイオンコンプレックスミセル
7. 温度応答性高分子ゲルへのコア架橋型酵素内包ナノ組織体の固定化
8. まとめ
第9章 コアコロナ型ペプチドナノスフェアの機能(和久友則,松本匡広,松崎典弥,明石満)
1. はじめに
2. コアコロナ型ペプチドナノスフェアの合成
3. コアコロナ型ペプチドナノスフェアのPEGブラシ構造解析とそのバイオ機能
4. 環境応答性ユニットの導入によるPEGブラシ構造制御
5. まとめ
第10章 ニトロキシルラジカル含有コアシェル型ナノ粒子の作製と機能(吉冨徹,長崎幸夫)
1. はじめに
2. ニトロキシルラジカル含有コアシェル型ナノ粒子とは
3. ニトロキシルラジカル含有ナノ粒子による酸性環境のイメージング
4. おわりに 【Column 産業界の最新コアシェル微粒子】
・カプセルトナー(岸本琢治)

・自己組織型の3層構造ナノ粒子によるバイオプラスチックの強靭化(位地正年)

・コアシェル型単分散球状メソポーラスシリカ触媒(鈴木登美子,矢野一久)

有機中空粒子(中村良幸)

金平糖状コアシェル型複合粒子Silcrusta(R)シリーズ(白石圭助)

・無機質でコートしたコアシェル型ナノカプセル『ナノエッグ(R)』(山口葉子)