次世代半導体メモリの最新技術

技術者・研究者向けの専門書籍紹介

次世代半導体メモリの最新技術術


発刊日 2009年2月 ISBN 978-4-88231-992-4
体 裁 B5判 302ページ


刊行にあたって
 メモリは情報処理システムや情報インフラを支える重要なハードウェアであるとともに,ソフトウェアの具現化のために不可欠のハードウェアである。情報処理システムにおけるソフトウェアの比重が増すとともにその重要性は益々高まってくる。最近は,社会の多様化に伴ってメモリに対するニーズも多様化してきている。そのような状況の中で,情報機器や情報システムの小型化,軽量化に伴って,低消費電力化が強く求められるようになってきたことから,不揮発性メモリに対するニーズが非常に強くなっている。メモリの研究開発のスタイルも以前とはかなり変わってきている。従来は,半導体メモリの研究開発と言えば,半導体分野の研究者や技術者だけで行ってきたが,最近は異分野の研究者が半導体分野の研究者と協力して,研究開発することが増えてきている。これは,素子寸法を微細化してメモリの集積度を上げるという従来の手法だけではメモリの高集積化,大容量化が難しくなってきたからである。そのため,シリコンに新しい材料を導入してメモリの高集積化,高速化を図ろうという試みが盛んになっている。シリコンに,強誘電体材料,磁性材料,カルコゲナイド材料,金属酸化物材料,電解質材料等の異種材料を搭載することによって,FeRAM,MRAM,SPRAM,PRAM,RRAM,固体電解質メモリなどの新しい不揮発性半導体メモリが提案されるようになっている。これらのメモリが,従来のDRAMSRAMフラッシュメモリとどのような関係を築きながら発展していくのか興味深いところである。
 本書は,DRAMフラッシュメモリも含めて,このように多様化する次世代半導体メモリの最新動向についてまとめたものである。

(「はじめに」より抜粋)

東北大学 大学院工学研究科 教授  小柳光正


書籍の内容
序章 半導体メモリの発展とDRAM最新技術
                                            (小柳光正)
1. はじめに
2. DRAMの歴史と最新技術
3. DRAMの回路構成と高速化技術
4. eDRAMとキャパシタレス・セル
5. 3次元集積化技術と積層型DRAM
6. おわりに
第1章 フラッシュメモリの最新技術
1. NAND型フラッシュメモリーの最新動向   (渡辺寿治)
  1.1 フラッシュメモリーとその動作原理
  1.2 NAND型フラッシュメモリーの動作原理
  1.3 NAND型フラッシュメモリーの特徴と動向
  1.4 NAND型フラッシュメモリーの微細化における問題点
  1.5 NAND型フラッシュメモリーの微細化に対する解決手法

2. NOR型フラッシュメモリーの最新動向   (田口眞男)
  2.1 はじめに
  2.2 フローティングゲートNOR型フラッシュメモリーの動作原理
   2.2.1 プログラム方法
   2.2.2 消去方法
   2.2.3 メモリーセルアレー
  2.3 チャージトラップNOR型フラッシュメモリ
   2.3.1 メモリーセルアレー
   2.3.2 動作原理
   2.3.3 プログラム方法
   2.3.4 消去方法
   2.3.5 読み出し方法
   2.3.6 ディスターブ
   2.3.7 動作マージンの拡大
   2.3.8 4ビット記憶方式
  2.4 B4セル
  2.5 フローティングナノドットセル

第2章 MRAMの最新技術
1. MRAMの最新動向   (猪俣浩一郎)
  1.1 はじめに
  1.2 MRAMの動作原理と特徴
  1.3 MRAMの開発状況
  1.4 ギガビット級大容量MRAMの開発に向けて
   1.4.1 スピン注入磁化反転
   1.4.2 ハーフメタルの開発
  1.5 おわりに

2. 磁気トンネル接合素子の技術開発   (湯浅新治)
  2.1 磁気トンネル接合素子のTMR効果
  2.2 アモルファスAl-O障壁MTJ素子のデバイス応用とその限界
  2.3 結晶MgO(001)トンネル障壁MTJ素子のTMR効果の理論予測
  2.4 結晶MgO(001)障壁の作製と巨大TMR効果の実現
  2.5 デバイス応用に適したCoFeB/MgO/CoFeB構造のMTJ素子の開発
  2.6 CoFeB/MgO/CoFeB-MTJ素子の巨大TMR効果の機構
  2.7 MgO障壁MTJ素子のデバイス応用

3. スピン注入書き込み型MRAM   (鹿野博司)
  3.1 まえがき
  3.2 スピン注入磁化反転現象
  3.3 スピン注入書き込み型MRAM
   3.3.1 メモリの構成
   3.3.2 Read/Write動作
   3.3.3 保持特性
   3.3.4 トンネル絶縁膜信頼性
  3.4 まとめ

4. トグル書込み方式   (鈴木哲広)
  4.1 はじめに
  4.2 トグル書込み方式の原理
  4.3 16Mbトグル型MRAM
  4.4 トグル型MRAMの書込み特性の改良
  4.5 トグル型MRAMの製品とアプリケーション
  4.6 おわりに

第3章 FeRAMの最新技術
1. FeRAMの最新動向   (石原宏)
  1.1 FeRAMの特徴と現状
  1.2 キャパシタ型FeRAMの高集積化
  1.3 トランジスタ型FeRAMのデータ保持時間の改善
  1.4 有機強誘電体膜を用いたFeRAM

2. FeRAMの基本動作と信頼性   (嶋田恭博)
  2.1 はじめに
  2.2 2T2C/1T1Cメモリ・セル:FeRAM
   2.2.1 セル構成と動作原理
   2.2.2 2T2C/1T1Cメモリ・セルの信頼性上の課題
  2.3 強誘電体ゲート・トランジスタ:FeFET
   2.3.1 セル構成と動作原理
   2.3.2 FeFETの信頼性上の課題
  2.4 おわりに

3. FRAMの市場展望   (田中均
  3.1 はじめに
  3.2 FRAMの特徴
   3.2.1 高速の書換え速度
   3.2.2 書換え回数の多さ
   3.2.3 書換え時の低消費電力
   3.2.4 CMOSロジックプロセスとの親和性
  3.3 期待される適用分野
   3.3.1 RFID
   3.3.2 スマートカード
   3.3.3 車載応用
   3.3.4 FRAMマイコン
  3.4 おわりに

第4章 PRAMの最新技術
1. PRAMの原理とその動向   (保坂純男)
  1.1 はじめに
  1.2 相変化抵抗素子の原理,特徴と課題
  1.3 相変化材料の抵抗率アニール温度特性と結晶構造
   1.3.1 抵抗率アニール温度特性
   1.3.2 結晶構造
   1.3.3 結晶サイズおよび表面構造
   1.3.4 窒素ドープと結晶サイズ制御
  1.4 相変化抵抗素子
   1.4.1 直列抵抗内蔵バーティカル型相変化抵抗素子
   1.4.2 直列抵抗内蔵バーティカル型相変化抵抗素子の省エネ化
   1.4.3 直列並列抵抗内蔵ラテラル型相変化抵抗素子
  1.5 多値記録相変化抵抗素子
   1.5.1 抵抗アレー方式相変化多値記録抵抗素子
   1.5.2 多層膜方式相変化多値記録抵抗素子
  1.6 相変化チャンネルトランジスタ
   1.6.1 不揮発メモリ特性
   1.6.2 相変化チャンネル電流制御
  1.7 まとめ

2. ECD/Ovonyx社における相変化電子メモリーの開発動向   (太田威夫)
  2.1 はじめに
  2.2 アモルファス材料のオボニックスイッチングおよびメモリー現象
  2.3 オボニックスイッチング材料
  2.4 相変化光メモリー(光ディスク)と相変化電気メモリー
  2.5 ECD/OvonyxとIntel,STMicro electronicsが開発したPRAM(OUM)デバイス
  2.5.1 ECD/Ovonyxのデバイス
  2.5.2 Intelバイスの構造と駆動
  2.5.3 STMicro electronics-Ovonyxのμトレンチ構造
  2.6 相変化不揮発性メモリーPRAM(OUM)の将来展開
  2.6.1 相変化多値メモリー
  2.6.2 相変化PRAMのスケーリング
  2.6.3 新相変化Cognitive素子:入力信号記憶スイッチング機能(Cognitive function)
  2.7 あとがき

第5章 ReRAMの最新技術
1. 不揮発性抵抗変化ランダムアクセスメモリ研究開発の動向   (秋永広幸,島久)
  1.1 抵抗スイッチ効果
  1.2 抵抗スイッチ効果を用いた不揮発性メモリ開発
   1.2.1 ペロブスカイト型酸化物を用いたReRAM研究の動向
   1.2.2 2元系酸化物を用いたReRAM研究の動向
   1.2.3 プロセス開発や理論研究など注目すべき話題
   1.3 今後の研究開発への期待

2. 抵抗変化メモリRRAMの電気特性制御    (粟屋信義,細井康成)
  2.1 序
   2.1.1 はじめに
   2.1.2 フラッシュメモリの限界とポストフラッシュへの要求
  2.2 RRAMの特性
   2.2.1 RRAMの定義
   2.2.2 金属酸化物の抵抗スイッチングの歴史的経緯
   2.2.3 直流挿引による金属酸化物の抵抗スイッチング特性
   2.2.4 チタン酸化物可変抵抗素子
   2.2.5 電圧パルス印加による金属酸化物の抵抗スイッチング特性と抵抗制御
   2.2.6 メモリセルの構成
   2.2.7 メモリとして要求される特性と課題

3. 遷移金属酸化物の成膜プロセス    (鄒弘綱,西岡浩)
  3.1 はじめに
  3.2 ReRAM研究の歴史
   3.2.1 二元系酸化物の抵抗変化特性
   3.2.2 三元系酸化物の抵抗変化特性
   3.2.3 三元系酸化物によるReRAM作製
   3.2.4 二元系酸化物によるReRAM作製
   3.2.5 ReRAM作製プロセスの比較
  3.3 ReRAM作製プロセスの開発
   3.3.1 成膜技術開発
   3.3.2 ReRAM開発用スパッタ装置
   3.3.3 CuO成膜
   3.3.4 TiOx
  3.4 まとめ

第6章 その他のメモリ最新技術
1. シリコン系ナノ構造集積と機能メモリデバイス開発   (宮崎誠一,池田弥央)
  1.1 はじめに
  1.2 シリコン量子ドットフローティングゲートMOSメモリの特徴
  1.3 シリコン系量子ドットの自己組織化形成
  1.4 シリコン系量子ドットの帯電状態評価
  1.5 Si量子ドットフローティングゲートMOSキャパシタ
  1.6 シリコン量子ドットフローティングゲートnMOSFET
  1.7 おわりに

2. シリコンドットメモリー   (古賀淳二)
  2.1 はじめに
  2.2 動作原理
   2.2.1 単電子効果
   2.2.2 基本メモリー動作
  2.3 最新技術動向
   2.3.1 技術課題
   2.3.2 揮発メモリー応用
   2.3.3 トンネル絶縁膜の厚膜化
   2.3.4 ドット材料エンジニアリング
   2.3.5 ドット構造エンジニアリング
   2.3.6 トンネル絶縁膜の高誘電率
  2.4 シリコンドットメモリーの展望

3. 金属ナノドット不揮発性メモリ   (田中徹,裴艶麗)
  3.1 はじめに
  3.2 金属ナノドットを有する新型不揮発性メモリ
  3.3 金属ナノドット膜の作製と評価
  3.4 金属ナノドットのメモリ特性
  3.5 高密度金属ナノドットとHigh-k絶縁膜を有するMISキャパシタバイス
  3.6 おわりに

4. ナノギャップスイッチ   (内藤泰久,清水哲夫)
  4.1 はじめに
  4.2 ナノギャップ電極の作製手法
  4.3 ナノギャップ電極のメモリー効果
  4.4 まとめ及び今後の展開