プラズモンナノ材料の最新技術

技術者・研究者向けの書籍紹介

プラズモンナノ材料の最新技術

発刊日 2009年6月 ISBN978-4-7813-0132-7 C3058
体 裁 B5判,305頁

刊行にあたって
  金ナノ粒子はなぜ赤いのであろうか?
 こうした素朴な疑問から金ナノ粒子の研究を開始したのは,1998年のことである。
 その後,2003年の日本化学会での特別企画開催,プラズモニクス研究会の発足という背景を受けて,2006年,シーエムシー出版から『プラズモンナノ材料の設計と応用技術』の発行に至った。
 初版では,どのような構成にしようか悩んだ。表面プラズモン共鳴とは何か?といった素朴な疑問から,期待される応用まで,多くの方にプラズモンを理解していただきたい。そして,その面白さ,秘められた可能性,そこから生まれる夢を共有したい,という強い気持ちがあった。初版は予想以上の好評をいただいたが,それ以上に,プラズモン関連の研究が爆発的に増えたことに驚きと嬉しさを抱いている。これはすなわち,私の想像をはるかに超える科学としての魅力と,応用展開の可能性を秘めている何よりの裏づけであると確信した。
 今回,第二弾発行のお誘いを同社よりいただいた。ときあたかも光科学技術の重要性が世界中で認識されるようになり,プラズモン関連の科学技術も益々注目されるようになってきている。そこで今回は,進捗著しい分野や萌芽的な分野について,ナノ材料の観点から今後の発展の方向性をまとめることが出来れば,より多くの読者に興味を持っていただけるものと考えた次第である。
 プラズモン関連分野の第一線でご活躍されておられる先生方には,ご多用中にもかかわらず,力の入った執筆をしていただき,感謝に耐えない。今,プラズモンナノ材料の研究が,楽しくて仕方が無いのである。これからプラズモンの研究を始めようという方にもわかりやすい内容であると思っている。本書を幅広い分野の方に活用していただければ,望外の幸せである。

山田 淳


書籍の内容

総論 プラズモンナノ材料関連の最近の動向
(山田淳)
1. はじめに
2. 金・銀ナノ構造の作製アプローチ
  2.1 リソグラフィー
  2.2 鋳型法
  2.3 金属ナノ粒子のボトムアップ作製法
3. プラズモニクス関連の動向
4. おわりに

第1章 プラズモンの基礎
1. 伝搬型表面プラズモンと局在型表面プラズモン―表面プラズモンのここが知りたいQ&A―(林真至)
  1.1 はじめに
  1.2 伝搬型表面プラズモンは,光の分散関係との交点で励起されるとよく言われるのですが?
  1.3 局在型表面プラズモンは直接光で励起できると言われるのですが?
  1.4 Mie散乱の理論がよく分からないのですが?
  1.5 金属表面に吸着した分子のラマン散乱や蛍光の増強はどうして起きるのでしょうか?
  1.6 文献にホットサイト(ホットスポット)での増強という言葉がよく出てくるのですが?
  1.7 おわりに

2. プラズモニックナノ構造の光学特性(田丸博晴)
  2.1 はじめに
  2.2 電子の閉じ込めと光の閉じ込め
  2.3 プラズモンと負の誘電率
  2.4 光の閉じ込めと表面ポラリトン
  2.5 電場増強効果
  2.6 サイズ効果
  2.7 おわりに

3. ナノ材料から観るプラズモニクス(栗原隆)
  3.1 はじめに
  3.2 化学の外から内へ
  3.3 ナノ材料の機能化
  3.4 ナノ材料の構造化における課題
  3.5 フラクタル的手法の適用
  3.6 おわりに(将来への期待)

第2章 プラズモニックナノ構造の最新動向

1. イオン液体を用いる金属ナノ粒子の新規合成法の開発(岡崎健一,桑畑進,鳥本司)
  1.1 はじめに
  1.2 イオン液体を用いる金属ナノ粒子の液相化学合成
  1.3 真空蒸着法を利用する金属ナノ粒子の液相合成
  1.4 イオン液体への金属のスパッタ蒸着によるナノ粒子作製
   1.4.1イオン液体へのスパッタ蒸着による金ナノ粒子の作製
   1.4.2 スパッタ蒸着条件による銀ナノ粒子のサイズ制御
   1.4.3 二成分同時蒸着による金銀合金ナノ粒子の作製
  1.5 イオン液体中に生成した金属ナノ粒子の固定化と機能材料への応用
  1.6 将来展望と謝辞

2. 金ナノロッド
  2.1 合成技術と表面処理技術(溝口大剛,平田寛樹,山田淳)
   2.1.1金ナノロッドの特徴
   2.1.2 合成方法の概要
   2.1.3 各種合成法の詳細
   2.1.4 まとめ
  2.2 組織化技術(中島寛)
   2.2.1はじめに
   2.2.2 金ナノロッドの1次元組織化構造
   2.2.3 金ナノロッドの多次元(2次元,3次元)組織化構造
   2.2.4 ポリマー修飾金ナノロッドの組織化構造
   2.2.5 テンプレート材を用いた金ナノロッドの組織化構造制御
   2.2.6 おわりに
  2.3 バイオ関連分野への応用展開(新留琢郎,新留康郎)
   2.3.1はじめに
   2.3.2 バイオコンパチブル化
   2.3.3 バイオセンシング技術
   2.3.4 細胞イメージング技術とフォトサーマル細胞傷害
   2.3.5 invivoイメージング
   2.3.6 invivoにおけるフォトサーマル治療
   2.3.7 近赤外光に応答する薬物放出
   2.3.8 遺伝子デリバリー
   2.3.9 おわりに

3. コア-シェル型有機-金属ヘテロナノ界面の設計・創成(及川英俊,小野寺恒信,増原陽人,笠井均,中西八郎)
  3.1 はじめに
  3.2 金属コア-共役系高分子シェル型ハイブリッドナノ構造体
  3.3 共役系高分子コア-金属シェル型ハイブリッドナノ構造体
  3.4 おわりに

第3章 プラズモンダイナミクス
1. プラズモンのイメージング(岡本裕巳)
  1.1 プラズモンの光学的イメージング
  1.2 近接場光学顕微鏡
  1.3 金属ナノ微粒子のプラズモンモードのイメージング
   1.3.1近接場透過イメージング
   1.3.2 近接場二光子励起イメージング
  1.4 金属ナノ微粒子集合体における電場の空間分布
  1.5 おわりに

2. プラズモニックナノ粒子の超高速分光(玉井尚登)
  2.1 はじめに
  2.2 単一金ナノ微粒子の発光ダイナミクス
  2.3 金ナノロッドの近赤外領域におけるプラズモン消失スペクトル
  2.4 金ナノロッドの近赤外領域過渡吸収スペクトル
  2.5 金ナノロッドの近赤外領域過渡吸収ダイナミクスの振動構造―コヒーレント音響フォノン
  2.6 金ナノロッドのヤング率―時間分解分光による解析

3. 金属-半導体界面での光電子移動(古部昭広)
  3.1 はじめに
  3.2 実験 
   3.2.1測定試料
   3.2.2 測定方法
  3.3 結果と考察
   3.3.1金ナノ粒子から酸化チタンナノ粒子への電子移動速度
   3.3.2 金ナノ粒子から酸化チタンナノ粒子への電子移動収率
   3.3.3 金ナノ粒子から酸化チタンナノ粒子への電子移動収率の波長依存性
   3.3.4 酸化チタンナノ粒子から金ナノ粒子への逆電子移動過程
   3.3.5 近赤外光励起による電子移動 
  3.4 まとめ

第4章 光-分子強結合場とプラズモニクス
1. 光-分子強結合反応場と多光子反応(上野貢生,三澤弘明)
  1.1 はじめに
  1.2 金属ナノ構造が示す光電場増強効果
  1.3 電子ビーム露光による金属ナノ構造体の作製
  1.4 金ナノブロック構造の光学特性
  1.5 2光子重合反応
  1.6 おわりに

2. 規則ポーラス構造による微小空間形成と光電場増強場への応用(益田秀樹,近藤敏彰)
  2.1 はじめに
  2.2 Alの陽極酸化にもとづく規則ポーラス構造の形成
  2.3 ポーラスアルミナにもとづく金属ナノドットアレーの形成
  2.4 金属ナノドットアレーにもとづく光電場増強 
  2.5 ポーラスアルミナにもとづく3次元規則構造の形成と光電場増強場
  2.6 おわりに

第5章 計測・センシング応用技術
1. 生体分子反応計測への応用(石田昭人)
  1.1 はじめに
  1.2 表面プラズモン共鳴分光法(SPR)
   1.2.1インタラクトーム研究における応用
   1.2.2 表面プラズモン共鳴イメージング
  1.3 プラズモン増強蛍光分光
   1.3.1プラズモン増強蛍光分析
   1.3.2 プラズモン増強蛍光イメージング
  1.4 まとめ

2. バイオセンシング(前田瑞夫)
  2.1 プラズモン材料とバイオセンシング
  2.2 非架橋機構によるバイオセンシング
  2.3 DNA修飾金ナノ粒子の自己凝集
  2.4 金ナノ粒子を用いる遺伝子診断
  2.5 DNA修飾金ナノ粒子を用いる分子センシング
  2.6 おわりに

3. 近赤外センシング(池羽田晶文,尾崎幸洋)
  3.1 はじめに
  3.2 近赤外光による伝播表面プラズモン励起
  3.3 表面プラズモン共鳴近赤外分光法
  3.4 表面プラズモン共鳴と偏光
  3.5 吸収応答SPRの実際
  3.6 高分散試料のためのSPRスペクトル解析
  3.7 低分散試料のためのスペクトル解析
  3.8 潜り込みはどの範囲まで及んでいるか
  3.9 おわりに

4. 表面増強分光計測の原理とその検証(伊藤民武,吉川裕之,尾崎幸洋)
  4.1 はじめに
  4.2 表面増強分光計測の原理
  4.3 表面増強ラマン散乱(SERS)分光計測
  4.4 表面増強ハイパーラマン(SEHRS)分光計測
  4.5 おわりに

5. 質量分析への応用展開(芝本幸平)
  5.1 はじめに
  5.2 表面プラズモン励起と分析技術との接点
  5.3 LDI-MS法の現状
  5.4 SP励起を誘起する金ナノ微粒子のLDI-MS法における利用法
  5.5 SP-LDI-MSにおけるイオン化機構へのアプローチ
  5.6 SP-LDI-MS法の検出限界の向上へのアプローチ
  5.7 実試料測定に向けた様々な試料分子の測定
  5. まとめと今後の展望

第6章 パターン形成・加工技術
1. 単分子膜リソグラフィによる微細加工:金ナノ粒子の選択配置(杉村博之)
  1.1 はじめに
  1.2 単分子膜のマイクロ加工と微細オブジェクトの集積化
   1.2.1UVリソグラフィによるアミノシランSAMのマイクロ加工
   1.2.2 VUVリソグラフィによるSAMのマイクロ加工
   1.2.3 VUVマイクロ加工によるテンプレート加工と金ナノ粒子空間選択集積
1.  2.4 マイクロコンタクト電気化学変換
1.  2.5 ナノプローブ加工と金ナノ粒子配置
  1.3 おわりに

2. 微細光学素子と計測への応用(田和圭子,西井準治)
  2.1 はじめに
  2.2 周期構造基板の作製
   2.2.1ガラス表面への周期構造の形成
   2.2.2 プラスチック表面への周期構造の形成
   2.2.3 GC-SPR基板の作製
  2.3 格子カップリング表面プラズモン共鳴
  2.4 格子カップリング表面プラズモン共鳴による増強蛍光
  2.5 バイオへの応用
  2.6 今後の展開

第7章 エネルギー転換技術
1. 貴金属ナノ構造の光電変換への応用(秋山毅,山田淳)
  1.1 はじめに
  1.2 無機半導体太陽電池における貴金属ナノ粒子の効果
  1.3 有機光電変換素子における貴金属ナノ構造の効果
  1.4 まとめ

2. 金属ナノ粒子-半導体系における光誘起電荷分離とその応用(立間徹)
  2.1 はじめに
  2.2 金ナノ粒子-酸化チタン系におけるプラズモン誘起電荷分離
  2.3 銀ナノ粒子-酸化チタン系の挙動
  2.4 金属ナノ粒子-半導体系材料の作製
  2.5 マルチカラーフォトクロミズムの挙動
  2.6 粒子サイズ変化の寄与
  2.7 その他の変化の寄与
  2.8 紫外光による再着色と色の保持
  2.9 その他の応用
2.10 おわりに

3. 光触媒への応用展開(大谷文章,エバ=コワルスカ)
  3.1 従来の光触媒
  3.2 酸化チタン光触媒の現状と課題
  3.3 貴金属微粒子担持光触媒
  3.4 局在表面プラズモン励起光触媒反応の可能性
  3.5 金微粒子を担持させたさまざまな酸化チタン
  3.6 金微粒子担持酸化チタンによる光触媒反応
  3.7 作用スペクトル解析
  3.8 反応機構
  3.9 おわりに

4. 表面プラズモン―蛍光分子間のエネルギー移動―(岡本隆之)
  4.1 はじめに
  4.2 蛍光分子から表面プラズモンへのエネルギー移動
  4.3 蛍光増強
  4.4 プラズモニック結晶による蛍光増強
  4.5 有機EL素子におけるエネルギー移動
  4.6 おわりに

第8章 光デバイス応用技術
1. 非線形光学効果を利用する光回路(岡本敏弘,原口雅宣,福井萬壽夫)
  1.1 はじめに
  1.2 表面プラズモンを用いた光回路・光デバイス
  1.3 光カー効果を利用した局在表面プラズモン型光スイッチ
   1.3.1ナノサイズコア-シェル型微粒子の非線形光学応答計算機シミュレーション
   1.3.2 ナノサイズコア-シェル構造の作製
   1.3.3 ナノサイズコア-シェル構造における非線形光学特性の実験観測
  1.4 今後の展望

2. プラズモニック導波路の新展開(高原淳一)
  2.1 はじめに
  2.2 プラズモニック導波路の基礎
   2.2.1光閉じ込めの原理
   2.2.2 基本構造
   2.2.3 ナノ光導波路としての性質
  2.3 プラズモニック導波路の最近の展開
   2.3.1超集束
   2.3.2 機能性導波デバイス
   2.3.3 長距離伝搬モードの応用
  2.4 おわりに

3. テラヘルツ領域での展開(萩行正憲,宮丸文章,高野恵介)
  3.1 はじめに
  3.2 金属開口配列のテラヘルツ波透過特性
  3.3 金属表面付近の誘電体薄膜の影響と高感度センシングへの応用
  3.4 まとめ

4. 電子デバイスへの応用展開(山田亮
  4.1 はじめに
  4.2 金属/無機半導体(MS)接合における光電流増強
  4.3 金属/絶縁体/金属(MIM)トンネル接合における光励起トンネリングの増強
  4.4 シリコンp-n接合における金属ナノ粒子を利用した光電変換および発光効率の増強
  4.5 有機半導体/金属接合および有機物/ナノ粒子コンポジットにおける光電流増強
  4.6 有機電界発光素子(有機EL)における発光効率の増強
  4.7 ギャップモードを利用した光透過電極の作製と光電子素子への応用
  4.8 SPPによる金属薄膜を介した長距離エネルギー移動の利用
  4.9 SPP発生/検出素子
4.10 まとめ