微細加工と表面機能

技術者・研究者向けの書籍紹介

技術者・研究者向けの書籍紹介

微細加工と表面機能
-ナノ・マイクロ構造による光学,摩擦,ぬれ等の機能実現-



発刊日: 2007年5月31日
体 裁: A4版 約300頁


ご案内
 固体表面に微細構造を設けることで,光学機能や濡れ性の制御など様々な機能が生まれる。クレジットカードのホログラムシール等これらを応用した製品は身の回りに多く見られ,応用は更に拡大するものとみられる。一方で,これらの微細構造を製作するプロセスは機械加工,ビーム加工から転写加工まで多岐にわたる。加工分解能がマイクロメートルの領域は,いわゆるトップダウンプロセス(転写の原理)とボトムアッププロセス(自己組織的原理)がオーバーラップする領域であり,どのプロセスが適しているということが必ずしも決まらず,結果的に,機能と加工プロセスの間の関係が複雑に絡まってしまい,応用の広がりを阻害していることも懸念される。
 これらの関係を体系化しようとする試みは,新潟大学の桝田正美 教授が主査を務めた(社)日本機械学会の「超微細表面形成およびその機能評価に関する研究分科会」(1999.5-2001.4)が最初であると筆者は認識している。この分科会終了後,途絶えてしまったこれらの活動を,筆者が主査を務める(社)精密工学会「微細加工と表面機能分科会」で再開し,現在も続いている。多様なプロセスをまとめた体系化となると時間も要すため,今後,専門委員会としての活動の展開が期待されている。
 このような状況の中,リアライズAT(株)から本書企画の提案があり,前記の桝田教授,太田 稔博士(日産自動車(株))および筆者からなる編集委員会でこれを受けることとした。編集委員会の議論で,加工技術者のみならず下記のような多面的な方々からも参照できるような書籍にしよう,という方針が議論された。
  (1)生産技術者・研究者
  (2)表面機能設計者・研究者
  (3)製品設計開発者(いわゆるマーケッター)
 これを受けて本書の構成は,第1章「表面機能の原理」,第2章「微細加工技術」,第3章「応用事例」とし,ややもすると前面に出がちな加工技術ではなく,機能設計の基本的な記述を第1章に据えた。そして,第2章では機械加工やビーム加工などに加え,ボトムアッププロセスの例として幾つかの自己組織プロセスを加えた。そして第3章の応用事例では,多方面の例を集めることで読者に多くの刺激が与えられるように配慮した。
 本書が多方面の技術者に対する刺激となり,新たな製品と加工プロセスの開発,ひいては体系化のきっかけとなることを期待したい。

2007年4月吉日  
諸貫 信行(首都大学東京 教授)


第1章 表面機能の原理

 1.1 光
  1.1.1 反射・回折
  1.1.2 構造発色
 1.2 トライボロジー
  1.2.1 機械的摩擦・磨耗
 1.3 ぬれ
  1.3.1 接着
  1.3.2 はっ水
 1.4 流れ
 1.5 金属腐食
 1.6 熱伝達
 1.7 生物と伝統材料の自己修復機能

第2章 微細加工技術の原理
 2.1 除去加工
  2.1.1 機械加工・切削
  2.1.2 機械加工・研削
  2.1.3 イオンビーム
  2.1.4 電子ビーム
  2.1.5 マイクロ放電加工
  2.1.6 レーザー加工
  2.1.7 エッチング
 2.2 変形加工・転写加工
  2.2.1 ナノインプリント
  2.2.2 ローラー式ナノインプリント,ナノトランスファー,ナノプレス,インジェクションモールディング
  2.2.3 LIGAプロセス
 2.3 付着加工
  2.3.1 めっき技術
  2.3.2 コーティング
  2.3.3 化学修飾, イムノアッセイ
 2.4 自己組織化プロセス
  2.4.1 陽極酸化アルミナ
  2.4.2 微粒子整列

第3章 応用事例紹介
 3.1 情報機器
  3.1.1 HDD(ナノパターンドメディア)
  3.1.2 ディスペンサ(インクジェット)
  3.1.3 光ピックアップ
  3.1.4 ダブルプリズムとプリズムアレイを集積したリバーシブルライト技術
  3.1.5 DVDメディア製作における微細加工技術
 3.2 機械装置
  3.2.1 真空装置
  3.2.2 エンジン用すべり軸受
  3.2.3 微細形状の制御によるトラクション性能向上
 3.3 繊 維
  3.3.1 構造発色の繊維化・塗装への応用
  3.3.2 構造発色のテキスタル・ファッションへの応用
  3.3.3 砂付着防止性新素材
 3.4 住宅機器関連
  3.4.1 システムバスの床面(FRP表面の親水化技術)
  3.4.2 壁, 床, タイル
 3.5 生体・医療
  3.5.1 インプラント(生体適合)
 3.6 印 刷
  3.6.1 ナノインプリント
 3.7 その他
  3.7.1 フェムト秒レーザーによる周期構造