高周波通信用フィルタ設計手法

技術者・研究者向けの書籍紹介

基礎から実用等価回路まで詳解 高周波通信用フィルタ設計手法

発刊日 2006年4月14日
体 裁 B5判、180頁


刊行のねらい  
フィルタは通信システムには必須のデバイスであり、高性能フィルタの設計技術が求められている。フィルタの古典的な設計理論である「回路網理論」は難解であり、理論を使いこなして実際のフィルタを設計できる設計者は限られる。一方、近年普及している近似や経験則、最適化の機能を盛り込んだ汎用ソフトは、手軽に使える反面、ブラックボックス化に起因する適用限界があり、任意の特性のフィルタを設計するには問題が多い。
こうした状況に鑑み、本書は、フィルタ設計に従事している、或いは従事しようとしている技術者が、任意の所望特性のフィルタを正確な理論に基づき、自ら実際に設計できるようになることを目的に書かれている。
 第1編では通常使われる各種の型のフィルタを網羅して特性や定数を共通の様式でテーブル化する。まず、設計理論を整理し直し、各種の型に共通した厳密で且つ見通しの良い設計手順として、3つの多項式による設計法を示す。それを用いて、それぞれの型の原型低域通過型の回路網関数を設計する。さらにそれら全てをフォスタ型回路及びはしご型回路で実現する。自己等化型フィルタ、不整合のフィルタなど新しい設計技術も取り入れる。
 第2編では、実際の高周波通信用のフィルタへの変換技術を示す。与えられた原型低域通過フィルタから高周波フィルタへの変換法、実際の高周波通信用のフィルタの実用的な等価回路の導出、落し込み技術を示す。虚ジャイレータ及び定リアクタンス素子の応用テクニックや時間領域での評価法など新しい実用的な技術が示されている。設計手順の一連のプロセスが読者にトレースできるよう、必要な数式やアルゴリスムを略さずに示し、また全ての設計例は具体的な特性、数値を用いて行う。読者は実際に自ら実用的な等価回路の設計ができるだろう。



第1編 フィルタの基礎と原型低域通過型の定数の算出

第1章 フィルタと回路網関数
1.S行列と3つの多項式

  1.1 ポートの正規化

  1.2 多項式係数の正規化

  1.3 3つの多項式と特性関数との関係

  1.4 行列の表現

2.多項式の性質と回路網に現われる特徴

  2.1 3つの多項式の零点

  2.2 複号と双対回路との関係

  2.3 h(s)と軸対称回路及び軸相反回路

3.所望特性の回路網関数の算出

  3.1 多項式を定める手順と正規化のルール

  3.2 無極型フィルタの回路網関数

  3.3 有極型フィルタの回路網関数

  3.4 複素伝送零点を有するフィルタの回路網関数

4.不整合負荷

  4.1 不整合負荷の設計

  4.2 ユニタリ条件の回復

第2章 2ポート回路網への展開
1.フォスタ型回路

  1.1 フォスタ型回路の種類

  1.2 低域通過型のフォスタ型回路の合成

  1.3 各型の回路定数の算出

  1.4 全域通過型

2.はしご型回路

  2.1 低域通過型のはしご型回路の合成

  2.2 各型の回路定数の算出

第2編 高周波フィルタの実用等価回路の設計と解析

第3章 高周波フィルタへの周波数変換
1.変数変換

  1.1 有理関数による変数変換

  1.2 周期関数による変数変換

2.フォスタ型回路の周波数変換

  2.1 変数変換による周波数変換

  2.2 対称性を改善した周波数変換

3.はしご型回路の周波数変換

  3.1 変数変換による周波数変換

  3.2 虚ジャイレータを含むはしご型回路

  3.3 外部Q  4.帯域通過型の結合線路フィルタ

  4.1 端面開放型のλ/4結合線路フィルタ

  4.2 端面短絡型のλ/4結合線路フィルタ

  4.3 回路定数の算出

第4章 等価変換による実用等価回路の設計
1.飛び越し結合回路

  1.1 CQセクションによる変換

  1.2 2重飛び越し結合回路

2.定リアクタンス素子を用いた変換

  2.1 双対素子への変換

  2.2 非対称特性の回路への変換

第5章 フィルタの時間領域設計と解析
 1.フーリエ変換について

 2.インパルス応答

 3.フィルタの特性とインパルス応答